白井喬二の初期の短篇集である「寶永山の話」を読了。入っている話は、寶永山の話、月影銀五郎、本朝名笛傳、築城變、老子鐘、九段燈と湯島燈、拝領陣、遠雷門工事、油屋圓次の死、剣脈賢愚傳、青桐證人、鳳凰を探す、獅人面のぞき、芍薬畸人、ばっさい、闘鶏は悪いか、猿の方が貴い、神體師弟彫、國入り三吉、目明き藤五郎、邪魂草。読後感は一言で言えば、「奇妙な味」としかいいようがない内容です。白井喬二はおそらく実際には存在していないと思われる怪しげな出典文献を次から次に繰りだして、奇妙なお話を語ります。出てくる人物は白井喬二の趣味と見えて、何かの技術を持った職人みたいな人が多いですね。「富士に立つ影」に先駆けて、築城師も既に登場します。後は門作りの名人だったり、彫刻師だったり、水門作りの名人だったり。ただ、全体的に中篇・長篇と比べると、白井喬二の短篇はあまりうまくないように思います。お話がただ奇妙だ、に終わってしまっていてもう一ひねりがないように思います。
白井喬二の「寶永山の話」
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