白井喬二の「桔梗大名」

jpeg000-52白井喬二の「桔梗大名」を読了。白井喬二の自伝でも、この作品についての言及はなく、いつ書かれたか不明です。桃源社の「昭和大衆文学全集」の第2巻に入っています。「桔梗大名」とは、桔梗を家紋とする大名、明智光秀のことです。明智光秀を主人公とする時代小説は比較的珍しいのではないかと思います。この作品では、明智光秀は非常に有能で情にも厚い武将として描かれています。明智光秀自身だけではなく、その家臣の視点から視た光秀が描かれています。ただ、小説としては未完で、明智光秀の話だというのに、本能寺の変まで行き着きません。ただ、波多野秀治の城攻めで、和睦して、波多野秀治らの命を保証する代わりに、光秀の母を人質にしていたのに、信長が波多野秀治の命をあっさり奪って、そのために光秀の母が殺されてしまったり、お馬揃えで、光秀が指揮を取って見事に演習を成功させたのに、それを信長が一言も褒めなかったなど、後の光秀の謀反の原因が蓄積していく段階で、唐突に話は終わってしまいます。また、もう一つの特徴として、光秀を築城の名人として描いており、二条城、安土城は光秀の手で建てられたとしています。「富士に立つ影」の作者らしい関心です。

三遊亭圓生の「三十石」

jpeg000-53本日の落語、三遊亭圓生の「三十石」です。
この噺は桂文枝で聴いたばかりの上方噺です。三十石というのは京都の伏見と大阪の八軒家間で淀川を上下する舟のことだそうです。その舟に乗るまでと、乗った後の色々な出来事を描いている噺ですが、どうも私はこの噺にあまり乗れません。強いて言えば、宿屋の番頭が宿帳を付けるところで、泊まる人が幡随院長兵衛とか助六とか、鴻池善右衛門とか小野小町とか好き放題に変名を使うのが面白いです。