白井喬二の「桐十郎の船思案、蜂の籾屋事件、傀儡大難脈」

jpeg000-41白井喬二の「桐十郎の船思案、蜂の籾屋事件、傀儡大難脈」を読了。学芸書林の全集の6巻について、メインの「神変呉越草紙」と「怪建築十二段返し」「江戸天舞教の怪殿」は既に読んでいて、残りのものを読んだものです。「桐十郎の船思案」と「蜂の籾屋事件」は1920年に発表され、「傀儡大難脈」は1925年に発表されたもの。最初の二つは名与力の桐十郎が活躍するものです。捕物帖の元祖は、岡本綺堂の「半七捕物帳」で1917年が最初ですが、白井も捕物帖を書いていて、今回読んだ3作品ともそうです。
「桐十郎の船思案」は桐十郎が追っかけていた土竜小僧の次郎蔵が、桐十郎がいつも釣り船を借りてその上で思案を巡らす習慣があったのを、その釣り船の船頭に化けて桐十郎と対面し、犯行を予告して桐十郎と対決するというお話しです。ちょっと日本版「ルパン対ホームズ」みたいな趣があります。
「蜂の籾屋事件」も桐十郎ものですが、その手下が蜂を使って捜査する、という所が非常に目新しいです。日本式ミステリーとしてなかなか読ませます。
「傀儡大難脈」は、捕り物名人の千面小三郎の活躍を描きますが、小三郎は何と25年も人形師に化けて事件を追い続けます。その事件というのが、何とユダヤ人陰謀説です!その陰謀で諸業の相伝秘状をことごとくその家から失わせる、というのがあって、それに人形師の小宇津大源と煙管師の村田菊吾がからみます。人形を操って色々な型を演じさせる場面があり、白井の蘊蓄が奔出して、実に初期の白井らしい作品です。