白井喬二の「本能寺前夜の織田信長」を読了。「歴史読本」の昭和36年5月号に掲載されたもの。織田信長の蘭語の通詞であった石井左内がある日空でトンビが何やら字を書いているように飛んでいるのを見ます。その字は「芙蓉」に読めました。左内はそれを天の知らせと解釈し、吉か凶かの判断に思い迷います。また、最初はそれを信長に上奏しようとしますが、蘭僧である有留巌(うるがん)に相談したら、不吉だから信長には言うべきではないと止められ、結局信長には言わないままになります。一方で信長自身は、自ら戒めとしていた、過去の勝ち戦を振り返らない、というのを破ってしまい、桶狭間の戦いの夜に信長が敦盛を歌ったのに合わせ舞った侍女と昔話をしてしまいます。そしてそれ以来国内にはもはや敵はいない筈なのに、桶狭間の時の今川軍のように敵に襲われて敗れる夢をしきりに見ます。そして結局本能寺の変が起き、左内のトンビの文字の解釈による不吉の予感も、信長の敵に襲われる夢も、どちらも的中する、という話です。
白井喬二の「本能寺前夜の織田信長」
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