平凡社の白井喬二全集の第5巻の「中篇集」の内容

平凡社の白井喬二全集の第5巻の「中篇集」の内容が国会図書館での調査で判明しました。
収録作品は以下の通りです。

沈鐘と佳人     1927年03月サンデー毎日
明治の白影     1930年10月週刊朝日
葉月の殺陣     1929年09月講談倶楽部
湖上の武人     1927年03月~05月文芸倶楽部
第二の巌窟     1927年07月週刊朝日
おぼろ侠談     1930年05月文芸倶楽部
幽閉記       1930年07~09月日曜報知
金襴戦       1925年01~12月婦人公論
江戸市民の夢    1928年02月~12月文芸倶楽部

中里介山の「大菩薩峠」第1巻

中里介山の「大菩薩峠」全20巻の内の第1巻を読了。ついにこの未完の大作に再挑戦することにしました。20代の終わりの頃一度読みましたが、10巻くらいで挫折。理由はその辺りになると時間の流れがほとんど停滞してしまいお話が進まなくなり読み進める気力をなくしたからでした。今回は何とか最後まで行ければいいと思いますが、さてどうなるか。
途中からだれるこの小説ですが、出だしはこの上なく魅力的です。まず題名にもある大菩薩峠で、巡礼の老人が主人公である机龍之助に一刀の下に斬られます。何故龍之助は老巡礼を斬ったのか、このことに何の説明もなく、読者は龍之助の冷酷無残な性格について強烈に印象づけられます。
後の巻になって盲目となった龍之助は夜な夜な辻斬りに出かける悪鬼羅刹のような殺人鬼に成り果てるのですが、この巻での龍之助はまだ多少人間的で、自分が試合で打ち殺した宇都木文之丞の妻であったお浜を自分の妻として、子供まで設けます。また大和の国三輪で世話になった植田丹後守には、父親であった弾正を思い出して神妙に仕えたりします。
表紙の写真のようにこの小説は5回も映画化されていますが、映画が扱っているのは最初の方だけです。この辺りは「富士に立つ影」と事情は同じです。