真空管アンプの主にキットを売っている店で、SUNVALLEY AUDIOというWebショップがあります。以前は「ザ・キット屋」という名前でした。確か豊田自動織機の社内ベンチャーか何かで始まった店だと思います。オーディオ好きの人は、真空管アンプをいつかは使ってみたいと思ってここの製品も候補に挙げるかもしれませんが、私に言わせればここの真空管アンプは「買ってはいけない」製品です。
私は今までここの真空管アンプのキットを3台買って組み立て、また真空管フォノイコライザーの完成品を1台買いました。今使っているのはイコライザーだけでアンプは使っていません。
「買ってはいけない」理由は、ここのエンジニアはエレクトロニクス製品の「素人」であり、電子部品の使い方が無茶苦茶で、その結果としてかなりの確率で短期間に壊れるからです。
写真はそのフォノイコライザーですが、これを例に使って説明します。この製品はマッキントッシュのC22という有名なプリアンプのフォノイコライザーの回路だけを真似したものです。真似をするのなら部品を含めて全てを真似ればいいと思いますが、ここの真似は回路だけです。
一番問題なのは写真の左から2番目のロータリースイッチです。ここにはアルプス電気製の、接点が外部に露出している「銀接点」のものが使われています。このスイッチはカートリッジのMMとMCを切り替えるもので、「微小電流」かつ「ほとんど操作されない」ものです。(今時のオーディオマニアが使っているカートリッジはほとんどMCであり、頻繁にMMとMCを切り替える人がたくさんいるとは思えません。)このような電流がごく小さくまたあまり操作もされないスイッチに銀接点のものを使うと、その接点の銀の表面が1~2年で硫化(空気中の硫黄分で銀が黒くなって電気を通さなくなること)します。つまりスイッチとして機能しなくなります。こういう所には「金メッキ」接点のスイッチを使うのが回路設計者の常識ですが、この会社はそういう常識をまるで持っていません。実際にこのフォノイコライザーは2年ぐらいの使用で、左チャンネルから音が出なくなり、原因はこのロータリースイッチで修理に出してロータリースイッチを交換してもらいました。(といっても同じ部品に交換しただけなので、多分また同じ不良が発生すると思います。)
また一番右のスイッチもロータリースイッチで、NKKスイッチズの製品です。これは電源スイッチですが、何故かON-ONの切り換え用のスイッチが使われています。もちろん端子の片方に結線しなければON-OFFとしても機能しますが、まともなエンジニアならそんな使い方はしません。何故なら端子が露出しているため、そこに金属片などが接触すれば、スイッチがショートする危険があるからです。
さらには、型番は忘れましたが、300Bのプリメインアンプには電源スイッチにオータックスのトグルスイッチが使われていました。こちらはスイッチの使い方としては間違っていませんが、スイッチというのは切ったり入れたりする時に突入電流が発生しますので、オーディオ回路でその対策をしないと、安物のギターアンプなどに良くありますが、スイッチを入り切りする度に「ボツッ」というノイズが入ります。こんなのはCR回路によるノイズキャンセラーを入れればいいだけですが、そういうことすら出来ていません。更にはこのアンプは半年ぐらい使った所でボリュームが故障して使えなくなりました。ボリュームを交換すればいいのでしょうが、ちょっと使い続ける気がしなくなりました。
私はここの製品は今後二度と買いません。