PCL86全段差動プッシュプルアンプー1ヵ月間試聴結果

PCL86全段差動プッシュプルアンプを作って聴き始めてからおよそ1ヵ月が経過しました。ここでこのアンプの音に関して感想をまとめておきます。

(1)定位の良さ、音場の広さ
これはまさに全段差動回路の効果だと思いますが、左右のセパレーションが良く、音像の定位が明確でまた音場も広いです。「カメルーンのオペラ」という長岡鉄男推薦の二本のマイクだけで録音した本物のステレオのSACD(元はレコード、SACDは数年前に発売されたもの)を聴くと、部屋の中がカメルーンの熱帯雨林になり、虫がちゃんと地面で鳴いています。
(2)S/N比の良さ
フルボリュームしても、ハムもノイズもまったくありません。非常に静かです。なので音楽ソースの細かな音が非常に良く聞こえ、聴感上のダイナミックレンジが広いです。これは、全ての電源にショットキーバリアダイオードを使った結果整流ノイズが少ないのと、定電流回路に三端子レギュレーターではなく定電流ダイオードのみを使ったこと、及び配線において要所でツイストペアーを多用したことの相乗効果ではないかと思います。
(3)安定性
1日12時間ぐらい連続して音楽を聴いても、非常に安定しています。発熱も電源トランスのケース上部がちょっと暖かくなるぐらいで全体的には真空管アンプとしては発熱は少ないです。また、PCL86という複合管のおかげで三極管部と五極管(ビーム管)部でヒーターは共用ですので、電源トランスのヒーター用巻線の定格2Aに対し、その6割の1.2Aしか使っていないので、余裕があります。またそのヒーターの駆動も13.4VDCと低めで無理をしていません。

といった所が長所ですが、逆に短所はこれはこの位の出力(3.1W+3.1W)の真空管アンプでは皆そうですが、オーケストラの強奏の所で歪っぽくなることがあるのと、出力音圧レベル88dB/mのクリプトンのKX-1.5ではまったく問題ありませんが、85dB/mのオートグラフminiGRでは音割れが発生します。

ということで、現在までは非常に満足しており、作って良かったと思っています。
なお、同じPCL86を使った超三結アンプも持って来て聴き比べてみましたが、高音の繊細さはそちらが優りますが、低音の締まりは全段差動プッシュプルの方が上で、トータルでは全段差動プッシュプルの方に軍配を上げます。