塩野七生の「ローマ人の物語」の「悪名高き皇帝たち]の[一]と[二]

塩野七生の「ローマ人の物語」の「悪名高き皇帝たち]の[一]と[二]を読了。皇帝としては2代のティベリウスと3代のカリグラです。この「物語」については、第1巻から「パクス・ロマーナ」までつまりアウグストゥスまで読んでいて、それ以降はまあいいかと保留にしていたものですが、最近ヴェーバーの「ローマ土地制度史」を訳していて、古代ローマに関する基礎知識の不足を感じるので、また読み始めたものです。ティベリウスについては「悪名高き」とされているのが可哀想なほど、名君として描かれています。ティベリウスの名誉復権が塩野七生の秘かな狙いだったようです。またティベリウスを再評価した最初の人がモムゼンだったというのも興味深かったです。ティベリウスは、クンクタートス=愚図、のろまと罵られてもローマの守りを優先してハンニバルを苦しめたファビウスの系譜に連なる人であり、ポピュリストの正反対です。しかし当時民主主義で選挙でプリンケプス(第一人者)が選ばれていたとしたら、ティベリウスはあっという間に消えていたでしょう。そのまったく反対でポピュリストそのものだっただけではなく、自分を神と称したカリグラが対照的に描かれています、というか事実そうだったんですが。カリグラの治世が4年にも満たず、最後は自身の近衛兵に殺されたのは知りませんでした。なんせ日本では(というか世界でも)映画カリギュラ(ポルノ映画)のイメージが強いですから。しかし国家でも会社でも、大体3代目にダメになることが多いですね。例外は徳川幕府ぐらいでしょうか。