小林信彦の「地獄の読書録」

jpeg000 48小林信彦の「地獄の読書録」を再読。この本は、1959年から1969年までに出版された本へのブックガイドです。前半が雑誌宝石の「みすてりぃ・がいど」、後半が平凡パンチ・デラックスに連載されたものの単行本化です。前半は名前の通り、海外ミステリーの翻訳に限定されています。(この当時はSFもミステリーの一分野として扱われていたため、SFも含まれています。)1960年代前半はミステリーブームで、毎月10点以上の翻訳ミステリーが出版されていますが、小林信彦はヒッチコックマガジンの編集長としての仕事の傍ら、これらの翻訳ミステリーのほぼすべてを読んで書評を書いています。平凡パンチ・デラックスでの連載では、書籍の範囲が広がり、日本人が書いたものやノンフィクションにも対象が広げられています。前半部のミステリーに関しては、私自身がほとんど読んでいないので、書評としての妥当性はわかりません。後半部になると少しは知った本が出てきます。全体として見た場合、SFの勃興ぶりがよくわかりますし、後半になると日本人SF作家も台頭してきています。また007のブームでスパイ物が非常に多く出ていたことがわかります。小林信彦の「地獄の~」シリーズには、他にも「地獄の映画館」「地獄の観光船」があります。どれも非常に小林信彦らしい、マニアックな労作です。