トマス・ハーディーの「妻ゆえに」”To please his wife”

高校の時の英語の先生に、Nという人がいて、その人の英語の授業で「妻ゆえに」”To please his wife”というトマス・ハーディーの短篇を読まされたことがあります。筋は要するに強欲な妻が亭主に大金を儲けるように強く言い、そのために亭主が危険な航海に出かけて命を落とす、という話です。
最近、何でこんな話を高校生に読ませたのか気になって、英文と日本語訳の両方を取り寄せて読んでみました。日本語訳では2段組でわずか18ページの短いものでした。お話をもっと正確に紹介すると、ある船乗りが難破した船から奇跡的に助かって故郷の町に帰って来ます。そこで女房となる娘を探すのですが、ある地味で大人しい性格の良い娘を見初めます。しかしその娘の友人である虚栄心の強い娘が、その船乗りのことを大して好きでもないのに、その娘が幸せになりそうなのをやっかんで、自分が船乗りの妻に納まります。二人は小間物屋を始めて男の子2人も授かりましたが、生活はかつかつでした。そうこうしている内に結婚し損ねた娘をある富裕な商人が見初め、妻にします。その屋敷は虚栄心の強い女の店のすぐ近くでした。商人の妻となった大人しい娘は虚栄心の強い女の店を贔屓にしてくれますが、それが虚栄心の強い女には我慢がなりません。それで亭主をたきつけて、昔の商売である船乗りに戻るように言います。亭主はそれで航海に出かけ、ある程度成功してまとまった金を持ち帰ります。しかしそれは金持ちの商人の暮らしをするにははるかに足らないレベルのお金でした。それで虚栄心の強い妻は、更に亭主をたきつけます。亭主はでは息子二人を助手として連れて行ってもいいいかと言い、妻は承諾します。それで亭主と二人の息子は航海に出かけてきますが、おそらくどこかで嵐に遭ったのか、いつまで経っても帰って来ませんでした。虚栄心の強い女は大人しい娘のお情けで屋敷の中に住まわせてもらい生計を立てることが何とか出来ましたが、いつまでも亭主と息子の帰りを待ち続け、失意の中で死んだ、というものです。
問題は、なんでこんな話を高校生に読ませたかです。当然結婚している人も子供がいる人もいない生徒がこんな話を面白がると思ったのでしょうか。英語自体はそんなに難しくないので高校生でも読めると思いますが、どう考えてもその先生の趣味としか言いようがないです。