宮本常一の「忘れられた日本人」

宮本常一の「忘れられた日本人」を読了。民俗学や文化人類学を大学の時に囓っていたので、この人の名前は当然知っていましたが、これまで読む機会がありませんでした。内容は多くが西日本の村落を宮本が精力的に訪ね、その土地土地での古老の話を聞き取ってまとめたものです。その内容は生きた本当の生活史という感じで、忘れられたなにかを思い出させてくれるものでした。その中には大田植えで、植えるのが遅いものを両隣のものが先行して植えていってしかもその間隔を狭めていってついには真ん中の者の行き場を塞いでしまうという、大学の時野村純一先生の授業で聞いた話も出てきて懐かしかったです。その一方で不満に思ったのが、西日本では伝承は村単位で継承されるのに、東日本ではそれがイエ単位になるという非常に興味深い指摘をしています。しかし宮本民俗学はそこで留まってしまい、さらに多くの事例を検討して理論として深めていくというのが非常に弱いです。それは逆に言えば、少ない事例から無理矢理もっともらしい理論化を急ぐ、西洋風の学問への反発かもしれません。実際に宮本は柳田國男の「方言周圏論」を否定的に捉えていたようです。とはいえ、これが「学」かと言われるとちょっと私には抵抗があります。むしろ文学的価値の方が高いように思います。

「帰ってきたウルトラマン」の「呪いの骨神オクスター」

「帰ってきたウルトラマン」の「呪いの骨神オクスター」を観ました。この怪獣オクスターですが、デザインの元は、水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる「牛鬼」じゃないの?確かゲゲゲの鬼太郎では、牛鬼を倒した者は今度は自分が牛鬼になる、ということでしたが、ウルトラマンがオクスターを倒した後、オクスターになってしまう、という話なら面白いのですが、そうはなりません。今回のブレスレットは何と湖の水を全部空中に吸い上げる強力ポンプになります。まったくドラえもんのポケットみたいで、ちょっと万能過ぎて白けます。物語中に怪しげな民俗学者が二人登場しますが、宮本常一辺りのイメージでしょうか。ところで、坂田兄弟の兄の方は足が悪くて杖を使っているのに、登山していますが、それは無謀というものでしょう。

文字通り汗牛充棟

新居の本の整理、ようやく一段落しました。しかし本棚16台を使ってもまだ残っており、今日Amazonにまた本棚を発注しました。本棚1台あたり大体200冊くらいということですから、単純計算で17台で3,400冊あるということになります。写真は一部です。私の場合、読む本はもちろんありますが、資料で買ったのも多いです。例えば四字熟語の辞書は5冊くらいあります。これはATOKの四字熟語を強化する時に使ったものです。後は白井喬二関係も本棚2台分くらいあります。これはどこかの図書館に寄付してもいいんですが、最近どこの図書館も蔵書スペースが足らず、寄付はまったく歓迎されないようです。まあ白井喬二関係では、私の蔵書が日本で一番充実していると思いますが。

トワイライト・ゾーンの”The Changing of the Guard”

トワイライト・ゾーンの”The Changing of the Guard”を観ました。シーズン3の最後のエピソードで、久しぶりに泣かされる、そして私にとっては身につまされる話でもありました。
エリス・ファウラー教授は、あるプレップスクール(私立高校)の英文学の先生で、もう50年も教壇に立っていました。あるクリスマスの休暇の前に、学校の支配人に呼ばれたファウラーは、引退を言い渡されます。ファウラー自身は自分が100歳になるまで教え続ける気でいましたが、学校側は若返りを望んでいました。家に戻ったファウラーは、自分の教えて来たことは何だったのだろう、どの生徒にとっても退屈で、自分が感動した引用句は生徒には響かず、単に彼らにとって時間つぶしに過ぎなかったと思い、ピストルを取り出して、彼がいつも教えていたある詩人の像の前で自殺しようとします。その瞬間に奇妙なことに学校の授業開始のベルが鳴り始めます。訝って教室に入ってみると、そこに7人の生徒が現れました。その生徒は全てかつてファウラーの教え子であり、そして事故や戦争で皆死んだ筈の人でした。彼らは順番にファウラーに習った詩句を引用し、一人はその詩句のおかげで勇気を得ることが出来、硫黄島の戦いで戦死したけど死後勲章をもらうことが出来たと言い、また別の一人は真珠湾攻撃で沈んだ戦艦アリゾナに乗艦しており、ボイラー室に残された仲間を助けようとして死亡していましたが、人を助けることの大切さをファウラーが教えてくれた詩句で学んだ、と言います。他の生徒も皆口々にファウラーの教えが有益であったことを証言します。授業の終わりの鐘が鳴ると、7人は消えてしまいました。しかしファウラーは自分の人生が無駄では無かったことを悟り、自殺を止めて生きていくことを決意しました…
トワイライト・ゾーンはまだシーズン4があるのですが、このエピソードは場合によっては打ち切られることも想定して作られたのではないかと想像します。

NHK杯戦囲碁 河野臨9段 対 関航太郎NHK杯戦者


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が河野臨9段、白番が関航太郎NHK杯戦者の対戦でした。この碁はプロらしい石の張った見応えのある応酬が続き、AIの予想手を上回る人間の手が沢山見られて実に面白い碁でした。戦いが激しくなったのは、右下隅で白が黒がハネただけで先手を取っていた箇所を切り当てしてからです。一時は白黒共に弱い石が3つずつ絡み合いながら、お互いが守るだけの手を打たず相手を攻めるという展開でした。しかし、黒が左下隅の白3子を取り込んで、隅から左辺で35目ほどの地を確保してから、黒が打ちやすくなったように思います。白は代償として右下隅からの黒を攻めましたが、途中で攻めを保留し上辺に向かいました。この上辺で黒が白の間に打ち込んで、白1子をほぼ取り込んだような形になりました。しかし後に白はこの石を動き出し、ここでまた眼の無い石のもつれ合いになりました。その後一旦白は下辺からの石に連絡し無事に分れたように思いましたが、その後白は自分も切られながらも黒も切断するという手を打ち、また攻め合い含みでかつ劫のついた戦いになりました。劫は左辺中央と上辺の2箇所に出来ましたが、左辺中央は黒が劫に勝ち、上辺は白が勝って無事に分れるかと思いましたが、黒は何と左上隅に手を付け、白が上辺の劫に勝っても全体で眼が無い、という攻めを見せました。結果として白は妥協し、この部分では黒が戦果を挙げました。その後白が今度は上辺の黒と攻め合おうとした時失着があり、攻め合いの黒は上手く脱出出来ました。しかし白が劫材で打ったノゾキが、黒が取っている白1目を逃げ出すシチョウアタリを兼ねており、黒は継げずに、白が切断し、これでまた形勢不明になりました。という具合の乱戦でしたが、最後は黒の半目勝ちという、これだけ戦った結果としては信じられないような結果になりました。関航太郎NHK杯戦者は、初戦で散りました。

旧居の撤退完了

新居への引っ越しは8月16日に行いましたが、その時に運びきれなかった荷物の片付けと掃除が昨日やっと完了しました。26日に不動産屋に立ち会ってもらって完全に明け渡します。和室は畳の表替えを18年間やっていなくてボロボロです。和室が暗いのは電灯を外したからです。しかしここともう一箇所荷物置きに借りていたワンルームを合わせた引っ越しは本当に大変で、実質4ヵ月かかっています。運んだCDが約4,300枚、LPが1,700枚、そして本が約本棚16台分です。もうこれだけの荷物をどこかに移すことは無いと思います。

「帰ってきたウルトラマン」の「次郎くん怪獣に乗る」

「帰ってきたウルトラマン」の「次郎くん怪獣に乗る」を観ました。何と言うか今回の郷隊員はたるんでいて、次郎くんが友達のよし子ちゃんの家から勝手に持ち出した箱根細工の箱を持っていってしまい、あろうことかそれをスペースアローの中に持ち込み、勤務中に開けようとします。しかもそれを点検した無人宇宙ステーションの中に置き忘れる、というひどさの二乗くらいの体たらくです。そんないい加減な勤務態度のバチが当たったのか、宇宙ステーションからはデータが送信されなくなり、行方不明になります。それは何故か地表に降りてきていて、次郎がその中に閉じ込められます。そしてそこにヤドカリンというヤドカリそのままの怪獣が現れ…という話です。どうも郷隊員が最初の頃に比べると三枚目的になってきています。ヤドカリンとウルトラマンの戦いは、最後はブレスレットを槍(ウルトラランスとか言った筈)に変えザリガニンを刺して動けなくし、久し振りにスペシウム光線で仕留めます。

スター・トレック・ザ・ネクスト・ジェネレーションの”The Arsenal of Freedom”

スター・トレック・ザ・ネクスト・ジェネレーションの”The Arsenal of Freedom”を観ました。エンタープライズ号はある惑星に、行方不明のUSSドレークの捜索に行きます。その星はかつて「死の商人」の惑星として、戦争をしている双方に武器を売りつけていた星でした。今はその星の住民は滅びていましたが、コンピューター類はそのまま残っていて、エンタープライズ号が接近すると武器を売る宣伝の動画が入りました。ドレーク号の探索でライカー、データ、ヤールが地表に降り立ちますが、そこで彼らはライカーの親友の振りをしたホログラムにエンタープライズ号の武器について根掘り葉掘り聞かれ、また空中を浮遊する物体に襲われます。彼らの救援にピカードとクラッシャーがやって来ますが、二人も襲われ深い穴に落ち、クラッシャーが手足に深刻な怪我をしてしまいます。ピカードとライカーが不在でエンタープライズ号はラフォージュが指揮を執っていましたが、エンタープライズ号も謎の物体から攻撃を受けピンチに陥ります。ラフォージュは戦いには不慣れながらも、円盤部を切り離してスターベースの基地に送り、残った戦闘部を惑星に引き返させて上陸部隊を救援しようとします。ピカードは地下でコンソールを発見し、皆を襲っていたのが武器のデモであったことを発見し、その武器を買う、と言ってやっと攻撃を停止させます。一方ラフォージュはエンタープライズ号を惑星の大気圏に突っ込ませてそこで攻撃して来る物体をなんとか撃退します。という訳で久しぶりにエンタープライズ号の戦闘シーンがあり、またそれなりに危機もあってまあまあの話でした。

「帰ってきたウルトラマン」の「ウルトラ特攻大作戦」

「帰ってきたウルトラマン」の「ウルトラ特攻大作戦」を観ました。台風怪獣「バリケーン」が登場し、自由自在に台風を発生したり止めたりします。台風のエネルギーは核兵器何百発分だとか聞いたことがありますが、それを自由に操るのですから、最強の怪獣かも。それに対してベムラーと同じくスペシウム光線を簡単に吸収されたりして苦戦したウルトラマンは、怪獣が起す台風とは逆に回って風を相殺し、バリケーンを宇宙空間に飛ばしてやっつけます。なお、郷隊員がやたらと「自然の神秘」を口にしたり、伊吹隊長からウルトラマンに変身していた間どこに行っていたと聞かれて「神頼みしていました」と何か変なのですが、それもその筈、脚本が実相寺昭雄でした。怪獣が台風を起している間、東京のスモッグが無くなって空がきれいになったという逆説も実相寺昭雄氏らしいです。

トワイライト・ゾーンの”Cavender Is Coming”

トワイライト・ゾーンの”Cavender Is Coming”を観ました。見習い天使のカヴェンダーは失敗ばかりで、天使失格になる所を、最後のチャンスということで、アグネス・グレップというダンサーの若い女性の守護天使になり、24時間の間に彼女の人生を変えて幸せにするように命ぜられます。カヴェンダーは彼女のために豪華な邸宅を用意し、リッチなパーティーを彼女が開いたことにします。お客は皆グレップを称賛して行きましたが、アグネスはどこか戸惑ったままです。結局彼女はそのままの生活で十分な幸せを感じており、元通り子供達や友人達と暮すことを望み、カヴェンダーは結局全てを元に戻します。天ではカヴェンダーが多額の経費を使いながら失敗したことで、いよいよ天使失格の判定が出る所でしたが、しかし上級天使がアグネスの状態をチェックし、彼女が幸せいっぱいであることを発見します。何はともあれ、アグネスが幸せであるということは課題を果たしたということになり、カヴェンダーは他の人間を幸せにするように命ぜられます。
しかしカヴェンダーの思っている幸せがきわめて物質的で、アグネスの方が本当の幸せとは何だか知っているという、ちょっと皮肉が込められたエピソードでした。