タイムトンネルー総評:ProsとCons

タイムトンネルの全30話を見終わったので、ProsとCons(良い所と駄目な所)を私なりにまとめておきます。

Pros(良い所)
-タイムトンネルという装置の持つ圧倒的なリアリティ。通常のSFではタイムマシンは大抵一人の科学者の発明で、ごく小さなもので多くの場合マシンは操作者と一緒に移動します。しかし、このタイムトンネルというのはアリゾナの砂漠の地下に800階という超巨大な規模で作られた軍事施設であり、国家プロジェクトとして作られたという設定に1950-60年代の宇宙開発競争を思わせるリアリティがあります。
-チームワークによるドラマ作りの面白さ。トニーとダグというちょっと性格の違う二人の科学者を主人公とし、そのバックでカーク司令官、女性研究者のアン、更に老科学者のスウェインが集まって、トニーとダグが毎回陥る様々な危険な状況を乗り切っていきます。カーク司令官は責任感が強く、また何とかトニーとダグを現代に戻そうとする温情もある指導者として描かれています。(巨大プロジェクトの責任者として見ると、構築と維持に莫大なお金を使っていながら、何らの軍事的成果も挙げていない無能な指揮官になってしまいますが。)アンとスウェインは時にはカーク司令官に強く逆らって自分の考えを押し通そうとすることもありますが、結局は司令官の判断に従います。
-歴史の後ろを覗き見る楽しさ。タイムトンネルの装置はモニターにもなっていて、トニーとダグが流された時代の状況を映像に映し出してくれます。これがいわば巨大なテレビ画面にも見える訳で、視聴者はまさにテレビで観ている訳ですが、テレビで歴史の裏側を眺め、その真実や裏話(まあ作り話ですが)を知る楽しみがあります。また、例えば沈没直前のタイタニック号の上に転送されたたら、「自分だったらどう行動するか」を考えるという楽しみもあります。

Cons(駄目な所)
-Prosのリアリティの素晴らしさと同時にそのリアリティの面での詰めの甘さが目立ちます。最高の軍事機密なのに簡単に民間人を中に入れているのは何故なのか。ある回ではその民間人が銃を持ち込んで自分の個人的欲望をタイムトンネルで果たそうとします。セキュリティーがあまりにも甘すぎて軍事施設として構築されている、というリアリティ感を損なっています。また、アリゾナの砂漠のど真ん中にあるのであれば、アクセスにはかなりの時間がかかる筈であり、実際に第一話では国会議員が飛行機でやってきて更に車に乗ってタイムトンネルに移動しますが、各回の話でトニーとダグが流された場所の地理を確認するために多くの民間人が招かれますが、彼らは大抵カーク司令官が要請してから10分くらいで登場します。まあ60分ドラマの都合上と言ってしまえばそれまでですが。
-時間旅行の理論的裏付けが弱く、トニーとダグが何故現在に戻れなくて毎回違った時空に飛ばされるのかがはっきりしません。二人は戻れないのに、毎回その当時の人間をタイムトンネルのコントロールルームに間違って転送するというのがルーチンになっていましたし、またジグスという警備員に機関銃を持たせてトロイア戦争の現場に送り込み、その後すぐ現代に戻すということが出来ています。この場合はOKで二人の場合は何故駄目なのかが最後まで不明です。またタイムマシンの話でありながら、過去に介入した場合にそれが現在にどういう影響を及ぼすのかと言う点についてはまったく言及がなく、何も気にせず過去に介入していました。さらにはタイムトンネルをどのように軍事的に使用するのかというのも不明です。
-SFドラマでありながら、非科学的な話が多く出てくること。まあタイムマシンというもの自体が非科学的な話なのかもしれませんが。例えばローマ皇帝のネロの亡霊が出てきたり、旧約聖書でのエリコの戦いの奇蹟話が描かれたり、アーサー王の魔術師マーリンが時空を勝手に超えてきてタイムトンネルを嘲笑する、なんて回もありました。
-未来やエイリアンの話で、とにかく特撮がちゃちです。宇宙の画面は書き割りですし、宇宙人やエイリアンはいつも銀の服を着て、銀色か金色の顔をしています。最後の2話だけは別の格好をしていましたが、それでも円谷プロの特撮に比べるとはるかにレベルは下です。
-英語の問題。英語版しか作られておらず、当時は100%アメリカで放映することしか考慮していないということは分かりますが、古代イスラエルや古代ギリシアのようなそもそも英語自体がまだ生まれていない時代の人間がいきなり英語を話すのはきわめておかしな印象を与えます。タイムトンネルというものが出来ているのだから、万能通訳機ぐらい出来ていても何もおかしくないと思うのですが。そういえば、流された二人は服装以外は何も現代のものは持ち込んでいません。後から追っかけたダグは武器や食料ぐらい持っていけばいいのに、と思います。

全体を通じて、全30話の内、2/3ぐらいまではそれなりに面白かったです。しかし、後半になってエイリアンや未来人が出てくる回になると、SF的な詰めの甘さや貧弱な特撮のせいであまり楽しめませんでした。また選択された時代がかなりの部分19世紀と20世紀前半に集中しており、もっと色んな時代が選択されれば良かったのにとも思います。