本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が許家元8段という、二人とも台湾出身同士の戦いという珍しい対戦です。ただ二人の対戦成績は余8段から見て1勝7敗と許8段が大幅に勝ち越しています。この碁の焦点は左辺の白模様に対し、黒が白の一間ジマリの横に付けて行き、そこからの展開でした。黒が白を切って、白が伸びたら調子で中央に出ていこうとしたのを、白は手堅く出切りを防いで、伸びませんでした。黒も白が伸びなかったのですぐ抜かなかったのですが、後の展開から見ると抜いていた方が優ったかなと思います。結局、後で白に2線からはねられ、そこで一子抜いて、さらに白に伸び込まれて、この黒全体の眼が無くなりました。そこで黒は中央に飛んで行きましたが、白も追撃し、黒が2回一間に飛んでその後ケイマに煽ったのを、白は右上隅の黒に肩付きしたりして入念に準備した上で、ツケコシを決行しました。黒はこのツケコシで2つに分断され、左側はいじめられて先手で2箇所利かされました。さらに分断された右側の4子は結局白の中央の大きな地の中に飲み込まれてしまいました。また右上隅でも白2子が攻め取りの状態で残っていたのですが、黒は攻め取りで締め付けられるのを嫌い、包囲している白2子を取りに行きました。ここで白が自分のダメを詰めるのを厭わず当てを決め、その後切っていったのが決勝点で、取られていた白が劫になりました。この劫は黒が勝ちましたけど、代償で他で得をされ、差が開きました。結局白の中押し勝ちでした。
月別アーカイブ: 2019年12月
日本企業のブラック化と戦う
Weberの日本語訳をしつつ思うこと
ここ2ヵ月くらい、ヴェーバーの「中世合名会社史」を日本語訳していて思うこと。私がこれを初めて日本語に翻訳するのに最適な人間とは決して思っていません。しかし、実際のところ、
(1)ヴェーバーをある程度理解している(ヴェーバーの他の著作をそれなりに読んでいる)
(2)ヴェーバーのドイツ語をある程度読解し意味が理解出来る、過去にヴェーバーの著作を一部でもドイツ語原典で精読した経験がある
(3)英語がそれなりのレベルで出来る
(4)ラテン語が分かる
(5)古典ギリシア語が分かる
(6)イタリア語の知識がある
(7)貿易のことを良く知っている
(8)日本語能力が上級以上(私は高校の時、旺文社の全国模試で、現代国語の偏差値86という普通あり得ないような得点を取っています。また当時実質全国2位の実力の進学校で現代国語の成績は学年1位でした。また前職で日本語入力ソフトの開発に従事しています。)
という人が日本に他に何人もいるとは思えないので、そういう意味では訳していて何というか変な自信みたいなのが付いてきて、「どんなものにも負けるものか」という感じになっています。そういう意味でブラックな会社と戦うことを躊躇わないような気持ちになってきています。(現在、パート社員から無期契約になった社員に対するあまりにひどい扱いを巡って、会社とバトル中です。私は社労士試験合格+研修修了です。)
まあ、この翻訳はオープン翻訳で無償で公開しているので、これでお金は一銭も取れませんが。
宇宙家族ロビンソンの”West of Mars”
宇宙家族ロビンソンの”West of Mars”を観ました。何というか、シーズン2のこの辺り、最低レベルの話が続きます。今回は宇宙のお尋ね者”Zeno”が宇宙保安官に追われていて、ロビンソン一家のいる星にやって来ます。それが何故かドクター・スミスそっくりで、スミスを銃で脅して衣装を替え、自分がドクター・スミスに入れ替わります。保安官は結局ドクター・スミスとついでにウィルを証人として奇妙な宇宙船で連れて行ってしまいます。途中でドクター・スミスが宇宙船の操作を乗っ取り、宇宙船はある星に墜落します。そこは西部劇の町そっくりの星で、そこの住民はドクター・スミスを見て「Zenoが戻って来た」と怯えます。
という感じで、もうSFというより三流以下の西部劇のパロディーです。2役を演じ分けるジョナサン・ハリスの演技は素晴らしいですが。
消えゆく正社員
ウーバーという会社をご存知でしょうが、その運転手というのはすべて独立の個人事業主として扱われ、ウーバーの社員ではありません。なのでウーバーは残業代も払う必要はなく、事故が起きても運転手自身の保険で処理せねばならず労災の扱いもなく、使用する自動車の減価償却費も運転手持ちです。契約の打ち切りもいつでもOK。それが今問題になってアメリカや欧州では沢山裁判になっています。これは他人事ではなくて、日本の会社もどんどん正社員の数を減らして、外部委託契約社員に切り替えていくことが予想されます。まあ日本の会社すべてがブラック会社化する訳です。
中世ラテン語辞書ソフト
大松博文監督の「なせば成る! 続・おれについてこい」と谷田絹子の「東洋の魔女と呼ばれて 私の青春」
大松博文監督の「なせば成る! 続・おれについてこい」と谷田絹子の「東洋の魔女と呼ばれて 私の青春」を読みました。個人的にすっかり大松監督ファンになっています。前著の「おれについてこい!」は1962年の世界選手権優勝の後に出版されていますが、続篇は1964年12月の東京オリンピックの後に出ています。やはり大松監督の合理性を強く感じたのは、1962年の世界選手権がピークだったニチボーチームを、日本全国からの東京オリンピックに出て欲しい!という願いに応えて出ることを決心した時に、1962年の時は4:6でソ連に負けていたのを精神力でカバーして勝った、というのを東京オリンピックでは7:3で圧倒して勝とうとします。そのため前回は「柔よく剛を制する」でどちらかと言えば守備力(回転レシーブ)とチームワークで勝ったものを、東京オリンピックでは「剛」も鍛え、攻撃力、スパイク力でも負けないようにします。もちろん平均身長ははるかに日本が低いですから、それを補うために今回編み出されたのが「移動攻撃」で、スパイクを打つ選手が右に左に平行移動してスパイクを打つ位置を相手から読めないようにします。後のミュンヘンオリンピックでの男子バレーの各種クイック攻撃とちょっと似ている所があります。更に、サーブも、ソ連は1962年の敗因の一つだった「木の葉落とし」サーブを徹底的に研究し、それを拾う練習も積み重ねていました。しかしニチボーチームは、木の葉落としの回転を微妙に変化させ、ネットを越えたらすぐ落ちるのではなく、落ちる位置も何種類にも分けて攻撃力をアップします。そして睡眠時間は1962年までより更に短くなり、オリンピックの直前にはチームはボロボロ状態になります。しかし「これだけ練習している私達が負ける筈がない」というある意味絶対的な自信になり、ついに東京オリンピックの決勝戦で、ソ連を3-0のストレートで下します。大松監督は、ソ連の敗因は1962年時点のニチボーチームを越えることを目標にし、その後のニチボーチームの進化を計算に入れていなかったことだと断言します。
谷田選手の本は、ちょっとしたエピソードみたいなものが中心ですが、大松監督が鬼どころか、映画をねだるとすぐ自腹で連れて行ってくれて食事までおごってくれた「仏」だったと言っています。
印象に残るのは、大松監督も谷田選手も猛練習が楽しかったと言っている所です。ともかく元気をくれるいい本でした。
NHK杯戦囲碁 河野臨9段 対 鶴田和志6段
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が河野臨9段、白番が鶴田和志6段の対戦です。河野9段は棋聖戦の挑戦者に決まり、いつも安定して強いですが、今年は勢いを感じます。鶴田6段は24歳で、中部総本部期待の若手です。対局は全体に黒が実利、白が厚みという感じで進みました。中盤で黒は右上隅にまだはっきり活きていない一団を抱え、更に下辺では取り残されている黒一子をいつ動き出すか、という状況で、右下隅から跳ね出して白を2つに分断しました。全体に白が厚い碁形でこれらの石をどうやってしのぐのかと思っていました。まずは右辺の白をいじめて多少は右下隅がしっかりしたのですが、その代り白をはっきり活かしてしまったので、この辺りはどうなのかな、と思っていました。鋭い技が出たのは右上隅で、ここは白が通常とは異なる受け方をしていた所でしたが、まずは出を決めて、それによって生じた断点を2線に置いて覗きました。これが好手で、この手自体は白に取られますが、ハネが利いて上辺の白地を分断する手がかりが出来、なおかつ右辺からの黒についても若干ですが強くなりました。この後さらに黒は下辺を動き出しました。白は当然右辺と下辺の黒を分断したのですが、曲げではなくケイマで2つの黒を分断したのがある意味やりすぎですかさず黒が出切りを決めました。こうなると右下隅の白も眼がなく攻め合い含みの戦いになったのですが、白は黒の一子をかみとる代わりに黒の一団も活かすという妥協的な打ち方をしました。更に白は右辺の黒を攻めましたが、黒が右辺の5子を捨てて、白2子を取り込んだのが好判断で、単純な大きさでは黒5子の方が大きいですが、右辺は元々活きている所に多少地を増やしただけであるのに対し、黒は中央が厚くなりまた下辺とも連絡し、何より先手が取れて左辺に回れたのが決勝点でした。これで地合では黒が完全にリードしたため、白は単純な寄せ合いでは勝機がなく、黒の左辺の地に突入しました。しかし逆に黒は左辺の白地に置きを敢行し、下辺から左辺に展開する白全体を狙いました。結果として白は左辺で打ち込んだ石と元からの左辺の地が連絡しましたが、その代償で中央で白十数子を取り込まれてしまい、ここで投了となりました。河野9段のチャンスでの鋭い踏み込みと的確な形勢判断が光った一局でした。
ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳第8回目公開
ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第8回目を公開しました。
いよいよ「コムメンダ」が登場します。今日の海上輸送の保険用語で「共同海損」というのがありますが、これが既に中世の地中海での貿易においてそういう取り決めがあったということに驚きました。共同海損は古い言い方では「投荷」とも言いました。要するに嵐などで船が沈みそうな場合、積み荷を海の中に投げ捨て軽くして危険を減らすということが古くから行われていますが、そういった場合捨てられた荷物の分の損を、捨てられずに済んだ荷物の荷主も平等に負担する、というのが元だと思います。それからイタリアの貿易というと、どちらかというと東岸のヴェネツィアとかの東方貿易がイメージされるのですが、歴史的にはジェノヴァなどのイタリア西岸とバルセロナなどのスペインの沿岸都市の貿易の方が先だったようです。
オールブラック日本の会社
昨日は私の勤務する会社の馬鹿な人事と喧嘩しました。理由は、パートさんの優秀な人を無期契約にする場合があり(長期間雇っている非正規社員を正規社員に登用しなさいという国の方針に形式的に従ったもの)、パートさんとは別の名称となっています。その人達には「賞与」を出しますと言っておいて(正規社員に近い扱いをしなければ意味が無いのである意味当然ですが)、また成績評価によって金額を変えます、といって結局一年半くらい経っても決まらず、ようやく本日初めての評価別「賞与」がその人達に支給されました。
その金額が、A評価が7000円、B評価が5000円、C評価が3000円です。法律で賞与を出さなければならないとか、いくらが最低額とかの規定はもちろんありませんが、日本語の常識としては、これらの金額は通常言う「寸志」の額にも達していません。最初に入った会社の入社年の6月のボーナスはこの「寸志」でした。しかし、金額は10倍以上ありました。
それでいて「しっかりフィードバックして志気を高めるようにしろ」とかの指示がメールで来て、切れたもの。
この会社、私が2005年に入社した時はなかなかいい会社だったのですが、近年本当にダメになりつつあります。ちょっと会社の若い人が可哀想です。