FE206NV2とFE203Σ-REの見た目での違いで、誰でも分るのはコーン紙の色。206NV2はかなり白っぽく、203Σ-REはかなり茶色です。でも203Σ-REの色が元々のFEシリーズのコーン紙の色で、針葉樹のパルプを使っています。40年以上前のFEシリーズの音は「紙臭い」と言われていました。私もFE103を4本使ったMX-1というマトリックススピーカーをキットで作って持っていたので、その意味は大体理解出来ます。要するに硬めの紙を丸めるとガサゴソという音がしますが、全体に音に艶気が乏しく、紙がこすれているような感じの乾いた傾向の音を称して「紙臭い」と言われていました。決して褒め言葉ではありません。しかし最近のFEシリーズ、とくにこのNV2は当時の紙臭い音はほとんどしません。何故かというと、Enあたりから、フォステクスはコーンの材料を木材から植物性に変え、例えば芭蕉の葉とか、ケナフ、バナナの葉などを使っています。これらは繊維が木材より軟らかいので結果としてガサゴソ感が出にくいのかと思います。それに対して203Σ-REは、203Σを現代に甦らせたものですから、当時に戻ってまた針葉樹のパルプに戻している訳です。ただそのままだと昔と同じ紙臭い音になりかねないので、植物性の繊維もかなり混ぜているようです。それで203Σ-REも紙臭い音ではありません。ただちょっと疑問なんですが、クリプトンの渡辺さんがこだわっているクルトミュラーのコーンも針葉樹のパルプだと思いますが、クルトミュラーのコーンに対して紙臭いという評価は聞いたことがありませんし、実際に聞いてもそういうイメージを抱いたことはありません。クルトミュラー社は特定の山の針葉樹林を所有してその木材以外は使わないと聞きました。FEシリーズは元々かなり廉価なスピーカーでしたから、私はその辺りの材料選定でベストを尽くしていなかったんではないかと思います。私が昔勤めた日立化成という会社で紙フェノールの銅張積層板をかつて大量に作っていました。紙フェノール基材で一番使う時に問題視されるのは反りですが、その時も完成品の反りを最小にするには、特定の製紙会社(確か当時の山陽国策パルプ)のどっかの特定の山の北の斜面の木のパルプを使ったクラフト紙でないとダメだ、というのを聞いたことがあります。木材は自然物だけに、何でもいいのではない、ということだと思います。
FEシリーズのコーンの材料
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