白井喬二の「東亜英傑伝 一 豊臣秀吉・成吉思汗」

白井喬二の「東亜英傑伝 一 豊臣秀吉・成吉思汗」を読了。東亜英傑伝のシリーズは、昭和17年に大阪の田中宋栄堂から出たもので全8巻ですが、何故か最初に出たこの「一」だけがこれまで入手できずに未読でしたが、ようやく全巻読むことができました。「豊臣秀吉」の方は、いわゆる太閤記的な書き方で、日吉丸の頃から語り起こされます。そして秀吉が天下人となってからのいわゆる文禄・慶長の役(朝鮮出兵)にかなりページが割かれているのが、昭和17年という時代を感じさせます。
成吉思汗(チンギス・カン)の方はどうってことないです。このシリーズの日本人以外の評伝はどれもページの割き方が同じ巻に載っている日本人より少なめで筆足らずという感じです。チンギス・カンが源頼朝と比べると15歳年下で、頼朝が鎌倉幕府を開いたのが1192年、チンギス・カンが皇帝になったのが1206年(鎌倉幕府の14年後)で、ほぼ平行しているんだな、というのが印象に残っただけです。

白井喬二の「陽出づる艸紙」(2)(「つるぎ無双」)

白井喬二の「つるぎ無双」(「陽出づる艸紙」改題)を国会図書館の電子データで読了。元々昭和11年の「講談倶楽部」に10回連載されたものですが、この雑誌は国会図書館といえども所有していませんでした。帰り間際に再度念のためデータベースを検索して、この「つるぎ無双」が出てきて、一応中身を改めてみたら「陽出づる艸紙」だったので、狂喜して帰るのを延ばして最後まで読みました。1952年に文芸図書出版社から出たものです。
以前紹介したように、父親から万能児として育てられた綴井萬貴太が17歳になってその教育が一通り終了し、その完全さを試してみるために、同じく万能人間として知られていた高月相良猊下を相手に戦いを挑むというストーリーです。萬貴太が勝負に出かける前に、父親共々殿様の不興を買って、蟄居閉門を命ぜられるのですが、妹の幸江が萬貴太に化けて身代わりとなり、萬貴太は無事出発します。途中で、高月相良の四天王と呼ばれる部下の一人で鍵縄の術を良くする豆玄(ずげん)が萬貴太の前に立ちはだかり、何度も貴太と豆玄の争いが描かれますが結局萬貴太が勝利します。一方萬貴太と高月相良の完全人間同士の勝負は、がっちりかみ合って、お互いにポイントを稼ぎ合っても決定打はなかなか得ることができません。二人は流鏑馬探しという手法でお互いに3問ほど課題を書いた紙を矢に結びつけてそれを放ちます。お互いが相手の放った矢を探して、そこに書かれた課題を解く、という形で戦いが行われます。これが「富士に立つ影」の佐藤菊太郎と熊木伯典の実地検分勝負を思わせます。しかし、二人はそれぞれお互いの課題を解いてしまいますが、それの判定が行われなかったのがちょっと尻すぼみです。また、二人の万能人間の熾烈な戦いに終始すればよかったと思いますが、全体の2/3くらいの所で新しい登場人物が登場し、この男が過去に高月相良と何やら関わりがあったとの設定で、最後は、高月相良の万能性の裏が暴かれてしまってちょっと意外な展開になります。萬貴太は結局戦いに勝って自身の万能性を確かめることが出来たのですが、しかしその後の萬貴太の人生は必ずしも幸福なものではなかった、という作者の説明があって、この物語は終わりになります。

白井喬二の「豹麿あばれ暦」(2)

国会図書館で、白井喬二の「豹麿あばれ暦」の連載第2回~4回の分を読むことができました。連載第4回までで中断した作品なので、これで全部です。豹麿は父親から万能人間になることを期待して修行の旅に出され、8年の修行をして61の師匠について、江戸に戻って来たのですが、父親と顔を合わせても、修行の過程で自分には敵が多数出来、それらを倒すまでは家に戻れないと言います。しかし父親はそこに何か嘘を感じます。一方、豹麿の姉で絶世の美女の登世は、堂本秋之介という武士と不義の仲に成り、お手討ちにされる所を将軍の恩赦で救われます。この姉の相手の堂本秋之介が逃げるために顔を変えるのを、それとは知らず豹麿が手伝います。また、お弓という豹麿の知り合いが子供を身籠もったのを、豹麿がこれまた堕胎を行います。この辺り、豹麿の身につけた技術の幅の広さが伺えます。その中には善だけでなく、悪に通じるような技術も含まれているようです。白井喬二は同じ万能児ものの「陽出づる艸紙(つるぎ無双)」の主人公綴井萬貴太について、作品の最後で「決して幸福な生活は送らなかった」としています。人間が万能の技を身につけても、決してそれがそのまま生きて幸福になることはないのだ、という白井の人生観が出ています。

平凡社の白井喬二全集の第15巻の「随筆感想集」の収録内容

平凡社の白井喬二全集の第15巻の「随筆感想集」の収録内容です。
いくつかの随筆、「朝日ヶ丘より」シリーズなどは、「大衆文藝」に載ったものだと思います。

カミソリ
私はこんな問題を喜ぶ
社会政策的史実に面して
学友変化
作者の言葉
統計抄
怪奇雑嚢中より
芸道怪奇蔵
秋の感想
作者の言葉
「富士に立つ影」の上演について
さい作りの話
座談二題
動かざる映画
カンヅメ
「新撰組」を終えて
即興死
映画身辺語
作者の言葉
「大衆文藝」宣言文
大衆作寸言
現在の「大衆文藝」
独楽の話
小説義塾
生田氏夫人の追悼文
感覚二題
探偵創作文章寸見
キジ
文藝予約的修行
今昔虚無入門
有島武郎氏追悼
大衆文藝と現実暴露の歓喜
映画疑問読本
朝日ヶ丘より その一
電碁戦後日
朝日ヶ丘より その二
電車太公望
朝日ヶ丘より その三
作者の言葉
紙城
朝日ヶ丘より その四
澤田撫松氏を悼む
大衆文藝の話
川柳選評
人口問題と文学
味覚直覚先生
女性の誘惑を克服する練習
海の色
戊辰初感
学究に非ず実行なり
我が民衆文学論
教育所感
作者より読者諸賢へ
読者と幼時の友を懐ふ
鎌倉日記
作者の言葉
無題(百字文)
読書は学に非ず(百字文)
感想二三
國史挿話全集序文
國史挿話全集月報随感集
いろいろ近況を語る
小我を没するの境地
プロレタリア大衆文藝の将来
怪奇と近代味
日常茶飯語
小説と歴史の区別
趣味の歴史挿話
朝日ヶ丘より
少年春月の思ひ出
実話の罐詰
掌篇フースーヒー
中国山脈と突破先生
文楽絶賛
大衆文藝論は複雑な文藝論であらねばならぬ
軟式野球観戦記
考證一夕話
幸吉君の印象
新緑近きに語る
考證の屑籠
回答一束

平凡社の白井喬二全集の第5巻の「中篇集」の内容

平凡社の白井喬二全集の第5巻の「中篇集」の内容が国会図書館での調査で判明しました。
収録作品は以下の通りです。

沈鐘と佳人     1927年03月サンデー毎日
明治の白影     1930年10月週刊朝日
葉月の殺陣     1929年09月講談倶楽部
湖上の武人     1927年03月~05月文芸倶楽部
第二の巌窟     1927年07月週刊朝日
おぼろ侠談     1930年05月文芸倶楽部
幽閉記       1930年07~09月日曜報知
金襴戦       1925年01~12月婦人公論
江戸市民の夢    1928年02月~12月文芸倶楽部