NHK杯戦囲碁 一力遼7段 対 高尾紳路名人

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が一力遼7段、白番が高尾紳路名人の対局です。この二人はどちらも最近タイトル戦で井山裕太棋聖に挑戦し、高尾9段は4勝3敗で見事名人を奪取、井山棋聖を6冠に後退させました。一方、一力7段は19歳での7大タイトルの天元戦初挑戦でしたが、1勝3敗で惜しくもタイトル獲得はなりませんでした。この二人の対戦成績は3勝3敗で既に五分です。前々回のNHK杯戦でもこの二人はぶつかり、その時は一力7段が勝っています。さて、対局は最近珍しい各所で定石が進行したじっくりした布石です。高尾名人が上辺の黒模様に深く打ち込み、ここから競り合いが始まりました。一力7段は右辺の白模様に打ち込み、これをからめて上辺の黒を攻めようとしました。白は右辺から中央にケイマに打ちましたが、すぐに黒に右辺を肩付きされ、今打ったケイマの白石を切り離されてしまいました。これで黒が打ちやすくなった感じです。その後白は左辺を詰め、さらに左辺の黒の二線に置きました。黒は上から押さえ、白は地を稼ぎましたが、黒は中央が厚くなりました。その後黒が下辺をいっぱいに詰め、白はケイマで中央に出ていこうとしましたが、後に黒から分断を狙われ、結局白1子を黒に取り込まれて地を損しました。さらに左下隅の白全体を狙われたのですが、これは何とかしのぎました。しかし黒は中央の白を出切ることに成功し、白の大石を二つに分断しました。この結果、中央につきそうだった白地が消え、白は連絡するだけの手を打たされました。これが決定打で、黒の優勢になりました。ヨセでは黒はかなり固く打ち、中央で黒地が5目くらいつきそうだった所が逆に白地2目になってしまうなど、ミスもありましたが、それまでのリードが大きく、結局白の2目半勝ちでした。

「第36期本因坊戦 全記録」

「第36期本因坊戦 全記録」(毎日新聞社)を読了。この棋戦が私が囲碁を覚えて最初に経験したリアルタイムの7大タイトル戦なのでとても印象が強いです。1981年の5月から7月頃にかけての対局です。また、趙治勲二十五世本因坊が碁界のトップに上り詰める途中の非常に大きなステップという感じです。武宮正樹9段、趙治勲二十五世本因坊の二人とも本因坊戦には相性のいい棋士です。武宮9段は、本因坊を合計で6期取っていますし、趙二十五世本因坊はそのタイトル通り、本因坊を合計12期、しかも10連覇しています。実は1989年の本因坊戦もこの二人の激突で、武宮9段は、それまで本因坊戦を4期連覇していて、名誉本因坊の称号がかかっていましたが、趙二十五世本因坊に0-4で負けて阻止されてしまいました。そしてその時から趙二十五世本因坊の10連覇が始まっています。この1981年はそんな二人の最初の本因坊戦での対戦でしたが、今改めて棋譜を追ってみた印象では、二人ともかなり出来が悪い対局だということで、全局を通じて双方に多くのミスがあって決して名局ではありません。そういう双方とも問題がありながら、趙二十五世本因坊の方が勢いと必死さが上回っていたと思います。

1981年第36期本因坊戦第3局 武宮正樹本因坊 対 趙治勲名人

囲碁を覚えて、初めてのリアルタイムの7大タイトルの戦いは、1981年の本因坊戦で、本因坊の武宮正樹に名人の趙治勲が挑戦した戦いでした。この棋譜はその時の第3局で、武宮の黒番です。上の棋譜の右半分の黒の打ち方が、いわゆる宇宙流で、特に上辺の白を平行に打って囲んだ手は何と美しくて簡素な打ち方だろうと当時感動しました。しかし、宇宙流は大模様の中にどかんと打ち込んで活きてしまうのが得意な趙治勲に対しては勝率が悪かったです。この時の碁も黒の中央の打ち方で問題があって、下の棋譜のように、黒模様の中の半分くらいに白が殴り込むように入り込んで生きてしまい、結局この碁は白の三目半勝ちになりました。この結果、武宮は三連敗になりました。その後武宮が二勝を返しましたが、最終的には四勝二敗で、趙治勲が自身初めての名人本因坊になりました。

韓国国家代表チームの「新手/新型 定石の解析」

韓国国家代表チーム(囲碁の)著の「新手/新型 定石の解析」を読了。私が囲碁を覚えたのは大学の時で、もう35年くらい経っています。当然定石もその頃覚えたのですが、今や定石は大幅に進化し、昔はまったくあり得なかったような手が登場していて、NHK杯の囲碁とかを観ていてもついていけないことがあります。そういう訳で、この本を買ったのですが、かなりの種類の最先端の定石が載っていて有用でした。しかしながら、その変化はかなり高度で、私の棋力ではついていくのが大変でしたが…また、日本の定石の本だと、一つの隅の図しか出てきませんが、この本は常に碁盤全体が示されていて、常に回りの配石との関係で、定石の結果の優劣が判定されています。考えてみればこれは当たり前のことなのですが、日本では古くからの慣習に左右されて、これができていません。そういう意味で、この本は単に定石の本と言うだけでなく、布石、序盤の戦いを兼ねた本になっています。序盤の戦いも、昔だったら、割り打ちを打って、それから開いてとじっくり行く所を、今の碁は相手の囲んでいる石にいきなり横付けしたりしますので、どこから戦いが始まるかがまったく読めません。そういう最新の打ち方に触れるのにいい本です。高段者向けです。

NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 羽根直樹9段

本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が羽根直樹9段の平成四天王同士の見応えのある対戦です。黒と白が上辺で競い合っていましたが、黒は左上隅で地を取っていたので上辺の戦いは白が有利かと思いましたが、そういう時でもひたすら攻めるのが山下9段です。上辺右の白にはいざとなったら左の白に連絡する保険があったのですが、それをふくらんで、白が押さえたのに切り込んで、この切った一子を取らせて先手で渡りを止め、そこから右辺へと延びた白を切断しました。この結果、上辺の白は攻め合い一手負けで、攻め取りとはいえ取られてしまい、まずは山下9段のパンチが入りました。さらに黒は2つに切られた白のもう一方の石も攻め、なんとこれも取ってしまいました。黒地は概算しただけで90目ぐらいになり、黒の勝勢になりました。しかし白は中央に厚みを築き、中地を囲って何とか挽回しようとします。黒は左下隅にかかっていき、白地の削減を図ります。その折衝の途中で白は上辺の取られていた石に手をつけてうまく劫に持ち込みました。劫材は右辺の取られている白を生きようとする手が何手もあり、白は劫に勝ってこの白が生還しました。その後白は右下隅の黒地に侵入し、また劫に持ち込むことを狙いましたが、その前に左下隅を黒に打たれて、本劫にされてしまいました。黒からは右下隅に侵入した白を取る手がすべて劫材になり、白は両方を持ちこたえることは出来ず、ここで白の投了となりました。一貫して、山下9段の豪腕が見事だった一戦でした。