NHK杯戦の囲碁は、準々決勝の最終局で、伊田篤史8段と井山裕太三冠王の、ヘビー級同士の対戦です。最初から最後まで見応えのある応酬でした。局面はまず右下隅で動き、白が3子を捨て石に下辺で締め付け厚みを築きました。この厚みをバックに左辺で黒に対して5線から利かした後、左下隅から跳ね出して下辺の黒を切り離しました。白が左辺で切りを入れてここでも厚みを築き、下辺の黒の壁石の角に白が打ったのが迫力のある攻めでした。その後の攻防で白は上辺に先着し、黒は右上隅の地を囲った時、白は小目の黒に付けて利かしに行きましたが、黒は反発し、ここの攻防が一番見応えがありました。黒は最強の手を打ち右上隅も上辺もつながって上手くやったかと思いましたが、白も考慮時間を使って最善の手を打ち、ワカレとしては互角で、全局的には中央の黒がまだ弱いのに対して白がまた厚みを築き、黒が上辺に入っていくことがほぼ不可能になり、白の優勢となりました。黒はヨセでも白から先手3目の所で逆ヨセを打たれ、1目半ほど損しました。最後に劫が2箇所残りましたが、白は左上隅を捨てて最初の劫を継ぎ、そうすると下辺の黒が切り離され眼が無く、もう一つの劫が本劫になりました。黒は劫に勝つためには右上隅の一部を捨てるしか無く、先ほど左上隅で得した分より損が大きく、ここで黒の投了となりました。 井山裕太三冠王は一時期の7冠王からするとかなり後退していますが、その強さは健在でした。