アウター・リミッツの”Keeper of the Purple Twilight”

アウター・リミッツの”Keeper of the Purple Twilight”を観ました。科学者のエリック・プラマーはある装置を研究していましたが、莫大な予算を使いながら最後の2つの方程式を得ることが出来ず苦しんでいました。そこにアイカーという人間に化けたエイリアンが現れ、エリックの感情を彼に与える代わりに、その2つの方程式を教えるという取引きをします。プラマーの恋人であるジャネットはプラマーが突然冷たくなったのに驚きます。プラマーは方程式の力で、全ての物質の磁気的な結合を破壊するという恐るべき兵器のプロトを完成します。研究所の所長はそれが人類を滅ぼすものだとして研究の中止を求めますが、予算を出していた軍の幹部はそれに多大な興味を抱き、予算の提供を約束します。実はエイリアンの目的は、その兵器を自分達の星から持ち込むのが大変なので、それをプラマーに代わりに作らせようとしていたのでした。しかし、プラマーの感情を得たアイカーは、憎しみ、愛といった感情に混乱して、元々自分達の惑星の巨大なコンピューターのようなものの一部として行動していたのが、そこから逸脱し始めたため、味方であった兵士エイリアンから狙われるようになります。アイカーはプラマーに感情を返しますが、その時兵士エイリアン達がまた襲って来て、結局アイカーも兵士エイリアン達もプラマーが作った武器によって消滅します。自分の感情を取り戻したアイカーが、その兵器自身によってコントローラーを破壊し、設計図もすべて破棄します。
冷静でロジカルなエイリアンが地球人の愛や憎しみという感情を得て混乱する、というのは良くあるパターンです。ちなみにプラマーを演じていたウォーレン・スティーブンスは、禁断の惑星、原子力潜水艦シービュー号やスター・トレックなどで何度も観たことがある俳優です。

ウィル・メリックの「サーチ2」

サーチ2を観て来ました。映画の構成は前作で理解していますので、その面の驚きはありません。また前作の時にはまだ使われていなかったITツールが最後に結構大事な役目を演じます。まだ公開開始直後でネタバレになるのでストーリーは書きませんが、前作同様楽しめました。ただ他人のアカウントのパスワードが簡単に分かりすぎ、という疑問は前作と同じです。今後生体認証とかに切り替わった時はどうするんでしょうか。(多分サーチ3があると思います。)またこの映画で示されてる様々な個人の行動履歴の追跡、まさしくジョージ・オーウェルの1984の世界で、中国なんかはそれを国単位でやっていると考えるとぞっとします。

スター・トレック ニュージェネレーションの”The Naked Now”

スター・トレック ニュージェネレーションの”The Naked Now”を観ました。これはファーストシーズンの”The Naked Time”を踏まえた話になっています。エンタープライズ号はある赤色巨星でもうすぐ大爆発して白色矮星と化そうとしている星の監視をしていたツィオルコフスキー号から通信を受け取りそちらに向かいます。しかしツィオルコフスキー号のスタッフからの通信は正気を失ったものでした。やがて爆発が起き、ツィオルコフスキー号は誰かによりハッチを爆破され、そのため急激に温度が低下し、全クルーが死亡していました。転送で艦内に降り立ったエンタープライズ号のクルーがそこで見たのは乱痴気パーティーの後で、ゴミが散らかり、またほとんどの人が裸で、ベッドで抱き合っているのもいました。あるクルーは衣服を着けたままシャワーを浴びようとして凍り付いていました。エンタープライズ号のクルーが戻って感染検査を受けますが、ラフォージがおかしなことを言い出し、またとても暑いと訴えます。ライカーはデータに命令し、「服を着たままシャワーを浴びる」という事例をデータベースから検索させます。そこでヒットしたのが、カーク船長のエンタープライズ号の事例で、ある細菌が体内に入ると、アルコールが生成され、感染者は全員酔っ払ったようになる、というものでした。(ファーストシーズンの第4話。)感染はエンタープライズ号の中にどんどん広がり、女医の子供のウェズリーも感染します。彼はトラクタービームの原理でフォースフィールドを作り、またピカード船長の偽命令を出す装置も作り、エンジンルームを自分のコントロール下に置いてしまいます。そうしている内に、赤色巨星の表面で爆発が起き、大きな岩がエンタープライズ目がけて飛んで来ました。しかしエンジンルームはしゃ断されている上に、何百とある制御チップを酔っ払い状態のエンジニア(日本人だと思います)がオモチャにするため全部抜いてしまい、エンタープライズは危機に陥ります。ようやくウェズリーがフォースフィールドに使っているエネルギー源を切り離し、ライカーらが中に入りますが、チップを全部元に戻す時間がありません。そこにウェズリーが、データにやらせらば速い、と提案し、データがチップを元通りに挿す作業を開始します。しかしわずかながらに時間が足りません。そこでウェズリーがまたもやエンタープライズ号を操作し、ツィオルコフスキー号を牽引していたトラクタービームを切り離し、そちらを先に岩石に当ててわずかな時間を稼ぎます。この間にデータがチップを全部元に戻すのに成功し、エンタープライズ号は危機一髪で脱出します。なおこのエピソードでは、酔っ払ったターシャとデータが肉体関係を持つというアダルトな展開があります。なお、細菌はエンタープライズ号のワクチンデータを使ってワクチンを作り、最初のは利かなかったのが、より変異型にも対応出来るように改良されたワクチンのお陰で駆除されます。
私には結構面白かったエピソードですが、放映時は「新シリーズは結局ファーストシーズンの焼き直しなのか」という批判が出て、低評価だったみたいです。

庵野秀明監督の「シン・仮面ライダー」

シン・仮面ライダーを観て来ました。まず思ったのは、庵野監督らしくやたらと理屈っぽいこと。それから冒頭のブラッディー・シーンは子供連れで来る親には不評でしょう。それから本郷猛がコミュ障でうじうじ悩むのはまるで碇シンジで、さすが庵野と思いました。笑ったのがKというロボットがそのまんまロボット刑事Kで、その幼体が左右アンバランスの人造人間キカイダーだったことです。それからラスボスの戦闘形態が「ダブルタイフーン」でV3と名乗るかと思ったら0号でした。また一文字隼人の登場シーンは、「お見せしよう」でオリジナルのままで懐かしかったです。仮面ライダーが仮面だけ脱ぐのは、石ノ森章太郎の原作がそうですし、またライダーマンというのも有ったので、私的にはOKでしたが、マスクの後ろから髪の毛がはみ出ているのは鬱陶しかったです。まああれこれであまり傑作とは思いませんでしたが、浜辺美波が可愛かった(ツンデレ)ので許す。

NHK杯戦囲碁 瀬戸大樹8段 対 藤沢里奈女流本因坊


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が瀬戸大樹8段、白番が藤沢里菜女流本因坊の対戦です。この対戦から対局者はマスク無しとなりました。(ここまで長かったです…)布石は双方最近の標準的な打ち方で、どちらも弱い石が無く、戦い無しでヨセに入るかという予想でしたが、右下隅で黒が隅に対してカケを打っている白石に迫ってから急に激しくなりました。黒が白を分断したのに、白は隅にケイマで滑って安定を図ったのに、黒が突き当たり、白が伸び込みました。この突き当たりで黒のダメが詰まったため、白からの下辺の出切りが成立し、黒は白一子を取っても活きておらず、攻め合いを目指して下辺で激しい差し手争いが始まりました。途中で黒が右下隅に利かしに行ったのに白は手を抜き下辺を取り切りました。代償で黒が右下隅を取り切れれば互角だったでしょうが、まだ白から劫にする手が残っており、ここで形勢は白に傾きました。それでも黒は右辺上方の模様を拡げて対抗しようとしましたが、白も深めに消しに行き、ここでまた戦いになりました。そのさなかに白は右下隅の劫を決行しました。劫立ての関係で右下隅の黒は本来あったセキで活きる手が無くなってしまい、結局お互いが取るか取られるかの大きな劫になりました。結局黒は劫に勝って隅を取り切りましたが、代償で右辺から上辺に延びる石が切断されました。こうなると黒は上辺だけで活きる必要がありましたが、もがいても2眼は出来ず、黒の投了となりました。

トワイライト・ゾーンの”Once Upon a Time”

トワイライト・ゾーンの”Once Upon a Time”を観ました。主役のウッドロー・ミリガンを演じているのは、何と喜劇王のバスター・キートンです。そのキートンへのリスペクトとして、サイレント映画風に字幕でセリフが表示されます。
ミリガンは1890年に生きていて、ある研究所の掃除人をしています。彼はこの時代の色んなことに不満を持っていました。ある日彼の雇い主であるある研究者が「タイム・ヘルメット」という30分だけ好きな時代に行ける装置を発明します。ミリガンは研究者達が祝杯を上げている隙にそのヘルメットを被り、1960年にダイヤルをセットします。すぐにミリガンは車が多数行き交い、騒音については1890年代の比ではない1960年のニューヨークにやってきます。そこで彼の頭から外れたヘルメットをローラスケートを履いた子供が持っていってしまい、彼はそれをズボン無しの状態(水たまりに落ちて乾かすために脱いでいた)で追いかけます。子供はある若いエレクトロニクスのエンジニアにぶつかり、ヘルメットを落します。ミリガンはやっとヘルメットを取り戻しますがそれは壊れていました。エンジニアから質問され1890年からやって来たと言いますが、初めは信じなかったエンジニアも、ミリガンが1890年の日付の新聞を持っていたり、当時の大統領の名前をすぐに言ったので信じるようになります。二人はヘルメットを何でも修理してくれる便利屋に持ち込みます。それは首尾良く直りましたが、エンジニアは自分が1890年に行くんだといってそれを被ったまま持っていってしまいます。ミリガンはエンジニアに30分になる直前に抱きついて、二人は無事に1890年に移動します。ミリガンは1960年に比べれば静かで、物価も信じられないくらい安いのに感激し、不満を言わなくなります。一方でエンジニアは、最初に想像していたのと違ってあれが無い、これが無いと不満たらたらです。ミリガンは彼にヘルメットを被せ、1960年に送り返します。
最初何でコメディー調なのかと、またセリフが音声で無いのは何故か不思議でしたが、バスター・キートン主演ということで全てが理解出来ました。ここの所つまらない話が多かったトワイライト・ゾーンですが、このエピソードは楽しめました。

新海誠監督の「すずめの戸締まり」

新海誠監督の「すずめの戸締まり」を遅ればせながら観て来ました。これもまた2011年の東日本大震災の産んだ作品です。日本では昔から地震は地下で大ナマズが暴れるから、という信仰がありますが、この作品ではナマズ→ミミズになっています。それでナマズの頭を抑えこんでいるのが要石で、本物は鹿島神宮にあります。(作品中の要石の絵は、いわゆる「鯰絵」という江戸時代の安政期に地震除けのおまじないとして刷られたものです。)そういう背景の元で、お話しとしては、ア・ガール・ミーツ・ア・ボーイです。新海監督の作品は「君の名は。」を観て、さすがに世代的にちょっと違うという感じがして、二作目の「天気の子」は観ませんでした。しかしこの作品は着実に表現の深化が感じられて楽しめました。また九州から四国、神戸、東京、そして東北へ、というルートは行ったことがある場所が多く、ちょっと懐かしさもありました。

アウター・リミッツの”The Inheritors”

アウター・リミッツの”The Inheritors”を観ました。このシリーズ初の2話続きで、合わせて100分は映画並みです。ベトナム戦争と思われる戦地で頭に被弾した兵士4人がいずれも奇跡的に助かっただけでなく、本人の脳波と違う別の脳波を見せ、その別の脳波は4人とも同じでした。4人はいずれもIQ200以上という高い知能を示すようになり、また催眠術も身に付けて病院を抜け出します。大統領補佐官?のアダム・バラード(演じているのは、コッポラの「地獄の黙示録」でワーグナーの「ワルキューレの騎行」をスピーカーで鳴らしながら攻撃するヘリの部隊を率いるキルゴア中佐を演じていたロバート・デュヴァルです)は、この背後には何かの陰謀があるのではないかと調査を始めます。4人の頭に入った銃弾はいずれも隕石から取られた金属で作られたものでした。4人の内一人のミンス中尉は、穀物相場で大金を稼ぎ、そのお金を他の3人に送ります。内一人は何かの空調装置、もう一人は軽くて鉄より強くかつ高低温に耐え、また自己溶着性も持つ特殊な金属、そして最後の一人は反重力エンジンとフォースフィールドを開発していました。結局3人が作っていたのは宇宙船でした。ミンスはその一方で4人の子供達をある意味誘拐するようにその宇宙船の組立工場に連れて来ます。バラードは宇宙船の行く先と目的を問い質し、ミンスはこの不幸な子供達(一人は盲目、一人は耳が聞こえずまた話せない、も一人は足が悪く松葉杖なしには歩けない、最後の一人は血液の病気で後1年の命)を、はるか宇宙の彼方の、人間に良く似た生き物が住む星に連れて行くと言います。その宇宙船の特殊な空気の中では4人の不具合は全て解消されていました。結局、バラードはミンス達が子供達を宇宙船で連れ去るのを黙認する、という話です。
うーん、100分も費やした割りにはもう一つでした。バラードがプロジェクトの謎を解き明かしていくプロセスは面白いですが、結末がとって付けたようです。これが世界の不幸な子供を全員救うノアの箱船のような話なら共感出来ますが、何故4人だけなのかという疑問が残ります。

火野葦平の「青春と泥濘」

火野葦平の「青春と泥濘」を読了。いわゆる「インパール作戦」に従軍したある部隊の悲劇を描いたもの。火野葦平は古関裕而と一緒にビルマに派遣されます。(「ビルマ派遣軍の歌」は作詞が火野葦平、作曲が古関裕而)古関が前線までは行かなかったのに対し、火野は実際の部隊と共に行動し、8冊もの詳細なノートを残しています。この「青春と泥濘」は戦後、火野が戦犯として3年間の公職追放を受けていた時期に書かれたものです。ノンフィクションとしては「インパール従軍記」が別にありますが、これはそういった取材を元にしたフィクションです。しかしながら、単なる事実の羅列を追いかけるより、小説という形式は人間の内部の感情まで深く描写することが可能です。この小説で取り上げられている部隊は、「他の部隊よりはまし」でまだ戦力が残っているという理由で、敵(イギリス軍)のM3戦車部隊の爆破とその道路の封鎖という極めて困難なミッションを与えられます。そしてほぼ全員がマラリアとアメーバー赤痢によって半病人の状態で、断崖絶壁を乗り越え、何とか敵の占領地域に入り込み、奇跡的にミッションを完遂します。しかしイギリス軍にとってはそれは古い戦車を処分する機会ぐらいの意味しかなく、日本軍が仕掛けた爆薬の量をはるかに上回る量の砲撃と空爆を受け、部隊は数人を残してほぼ全滅します。
インパール作戦については、よく「日本軍最悪の作戦」などと評価されていますが、調べてみると非常に複雑な要素が絡み合った戦いであり、今後の教訓にするにせよ、色んな面から眺めてみて考えて見るのに良い素材と思います。
ちなみにこの小説の中でおそらく牟田口廉也をモデルにしたのであろう中将が、複数の自軍兵士に命を狙われるというのが出てきますが、これはおそらく実際にあったのでしょうね。イギリス軍側の総司令官ウィリアム・スリム中将が名将であっただけ、あまりにも対照的です。

ダン・クワン、 ダニエル・シャイナートの「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

エブエブを観て来ました。何というか「イカレタ」映画でした。それは3割はいい意味で、7割は悪い意味でです。SF映画で、アクション映画で、カンフー映画で、コメディーで、最後はファミリー映画でした。撮影は、CGだけでなく、現在の撮影技術のすべてを駆使していて、そういう意味では10年前には作れなかった映画です。SFという意味では、昔からよくある多元宇宙なんですが、それぞれの宇宙を「バース」と呼んでいるのは、実はメタが隠れたスポンサーなのかあるいはパロディーなのか、それは分かりません。主人公のエヴリンは本当にどこでもいそうな中国人のおばさんで、中年以降の松田聖子という感じです。娘の「ガールフレンド」が女性というのも今風ですが、こういうのって10年くらい経つと却って古くさく感じるのではないかと思います。コメディーにしているのは、ピンチに陥った時に、別のバースに飛んで何か特技を得るためのジャンプの条件が何か突拍子もないことをするということで、オシッコを漏らしたり、トロフィーを自分のおケツに突っ込んだりとか、そういうのです。話の中で誰かに操られていることの象徴として、アライグマを頭の上に乗せている、というのが出てきますが、鉄板焼き屋のシェフで本当にアライグマを乗せているのが出てきて笑えました。丁度今日何かの記事で、日本のタヌキは外国にはあまりおらず、空想上の生物と思われているというのがありましたが、このアライグマもそんな感じでした。まあ全体には若い人向けで、年寄りにはついて行くのが辛いです。とか言って、シニア割引の1,200円で入りました。