NHK杯戦囲碁 芝野虎丸名人 対 瀬戸大樹8段

本日(20日)のNHK杯戦囲碁は、またTOEICのSpeakingのテストの関係で録画での視聴。黒番が芝野虎丸名人、白番が瀬戸大樹8段という好カードでした。この対局は白の名局と言って良いかと思います。序盤で上辺で白が黒をハサミツケていた所に、黒が2線への出を敢行し、結局上辺右の白3子を取り込んだ時点では黒がいいのかなと思っていました。しかし白は手厚く構えて動じません。その後何度も白から仕掛けるチャンスがあり、特に左上隅の劫は白から仕掛ければ、上辺右の取られている白石を復活させる手が劫立てになり、白が面白いかと思いましたが白は決行せず、結局黒が手を入れました。また右上隅で黒が大きく構えたので、白は三々に付けて行きましたが、これも黒のハネにすぐ切り違えを打たずチャンスを伺っていました。それが後になって利いてきて、右下隅の黒の包囲網で黒が膨らんで白1子の動きを制止している所で、その白1子を伸び出しました。これが両にらみの好手で、右下隅を受けると中央が危なくなりますので、やむを得ず中央に手を入れましたが、そうすると右下隅でハネ出して黒地を減らす手が打てました。後は普通に寄せても白が優勢なのでそうするのかと思いましたが、貯めていた力を一気に出す感じで中央の黒に襲いかかり、結局10子ぐらいを取り込んで、ここで白の勝ちが決まりました。その後芝野名人が勝負手を何手か繰り出しましたが、白が的確に受けて、結局黒の投了となりました。名人対8段という立場を逆にしたような白の横綱相撲でした。

NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 山下敬吾9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が伊田篤史9段、白番が山下敬吾9段の注目の対戦です。この対局の見所は白番の山下9段が2手目で5の5,4手目が高目という意欲的な布石でした。左上隅は黒が三々に入って地を取り、左下隅は5の5のまま放置され、それが働くか働かないかが焦点でした。右下隅にかかった白が挟まれた後ツケ引いて、その後隅の黒に迫り競い合いになりました。その後白は右辺に打ち込み、単に逃げるのでは無く、逆に右辺の黒を攻めようとしました。右辺の白は最悪2線に切って劫で活きる手があり右辺の競い合いは白に希望のある戦いでした。結局その後白は中央で黒石を切って行き、その戦いの中で左下隅の5の5の石が中央の黒を攻めつつ左下隅を大きく囲う一石二鳥の手になり、山下9段のリードとなりました。しかし黒は左下隅に手を付け、劫になれば御の字の所を巧みに無条件で活き、かなり盛り返しました。しかしそれでも白のリードでしたが黒は更に右下隅で劫を仕掛けて勝ち、形勢は混沌として来ました。その後も黒がヨセで好手を放って白を追い詰めましたが、結局白の半目勝ちとなりました。ユニークな布石を打つのは誰でも出来ますが、それを最大限に活用して勝ちに結びつけた山下9段の芸が光った一局でした。

NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 佐田篤史7段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が佐田篤史7段の対戦です。佐田7段は本因坊リーグに入ったことにより、4段から7段に昇段しています。この碁は白が柔軟な打ち回しを見せ、特に右上隅で白が黒の二間ジマリの間に付けていってからの攻防が見応えがありました。白が出て行ったの黒がすぐ受けず上辺の白にコスミツケて、白がそれに受けずにハネ出し、上辺は黒が好形になり、その代わり白は右辺で黒を低位に追いやり中央が厚くなりました。その後焦点になったのは白が右辺の黒に横から付けていった手で、白は右上隅の黒を狙っていました。しかし黒は反発して右下隅の白を分断しました。結局白が右上隅を取りましたが、黒は右下隅の白を本気で取りかけに行きました。この白は眼が無く、また攻め合いでも勝つのが難しいため、白は捨てて締め付けを狙いましたが、激しい戦いの結果として最終的に締め付けの効果は限定的で白は大きく取り込まれ、黒の右下隅の地が大きく勝勢になりました。白はその後左辺を大きくまとめようとするなどしましたが左下隅との絡みもあって左辺にはみ出されて及ばず、黒の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 本木克弥8段 対 六浦雄太7段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥8段、白番が六浦雄太7段の対戦です。六浦7段は何とシードで2回戦からの出場で、理由は賞金ランキング上位ということです。最近の充実ぶりが窺えます。布石は最近の碁には珍しくお互いに模様を張り合うような碁になりました。焦点になったのは右辺で、ここの攻防は見応えがありました。結局黒が上手くしのいで活きて、更に上下の黒が連絡したので、ここだけ見ると黒が上手くやりました。しかし白は右下隅で様子見をしていた1子を、右辺が厚くなったのを利用して動き出しました。ここで黒が逆襲して白を切断して行ったのが少し打ち過ぎだったように思います。結局黒の右下隅からの大石に眼が無くなり、白に下辺を荒らされ、かつ左辺の模様にも入りにくくなりました。しかし黒も目一杯に打って、白の中央の大石との攻め合いに持ち込みました。しかし白の方がはるかに手が長く、結局黒は左辺に絡めて左上隅に入り込みここでヨセコウですが、何とか劫に持ち込みました。白は1手の余裕を使って左辺を備え、黒がダメを詰めて本劫になりました。しかし劫材は白が多く、劫自体は黒が勝ちましたが、代償で右辺の黒を取り、これで白の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 鈴木伸二7段 対 洪爽義3段


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が鈴木伸二7段、白番が洪爽義3段の対戦です。この対戦は目まぐるしい展開で、まずは右上隅で黒が白を攻めましたが、白が右辺で切りに回りその後うまく右辺を地にして稼ぐことが出来ました。その代償で黒は右中央の白と上辺左の白をからみにして攻めようとしました。しかし白は取られかけていた右上隅の白を連れ戻して逆襲し、攻め合いになりました。しかし、白が10の1にはねた手が好手で、これによって中央の戦いで黒が白を切ることが出来なくなり、黒の12子が取られて白の40目近い地が出来ました。しかしその後黒からの利かしに白が2回ぐらい手を抜いたため、取られていた黒石を復活させる可能性のある劫になりました。この劫は結局白が勝って取られた黒はそのままでしたが、その代償で黒は右辺に潜り込んで地を稼ぎながら活き、差を縮めました。更には右下隅の白を地を稼ぎながら攻め、また左辺下方の白3子の攻めに回り、勝敗の行方は分らなくなりました。この白のシノギで、白も最強の手を打ち、結局この白石だけでは眼はなく、他との絡みで何とかという展開になりました。しかしここで中央にからめて逆に中央右の黒一団を取ってしまう手があり、結局左下隅の白と中央右の黒の振り替わりになりました。この結果は黒が若干儲けてついに逆転かと思われました。しかし白は取られていた所でしかけてそこに手が残っていて、中央の黒が劫付きながらほぼ全滅ということになり、白の中押し勝ちに終わりました。ほとんど終わっていた碁を互角以上に挽回した鈴木7段もさすがですが、それ以上に洪3段の鋭い読みが光った一局でした。

NHK杯戦囲碁 上野愛咲美女流本因坊 対 志田達哉8段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が上野愛咲美女流本因坊、白番が志田達哉8段の対戦です。この二人は初手合のようです。対局は黒が上辺を深々とえぐった一団を巡って、二人の棋風とは逆に志田8段が攻め、上野女流本因坊が凌ぐという展開になりました。しかし黒は上手い手筋で中央に脱出し、また右上隅でも若干得をしたのでここで黒が若干優勢になりました。しかし白も簡単には土俵を割らずじわじわ挽回を図ります。その後大きな戦いはなく大ヨセに入りましたが、黒が右辺の白に対して4線のハネを打ったのが好手で、右辺の白地が減り、また右上隅の黒から1線のハネを先手で打てたのが大きくここではっきり黒が優勢になりました。その後、黒はヨセで定評のある志田8段の追い込みをかわし、最後は右上隅の劫に勝ち、後は紛れる所もなく白の投了となりました。上野女流本因坊はこれでNHK杯準優勝の経験もある志田8段を下して3回戦進出です。どこまで勝ち進むか楽しみです。

NHK杯戦囲碁 孫喆7段 対 結城聡9段


本日(金曜深夜)のNHK杯戦囲碁は、残念ながらレコーダーの設定が上手くいっていなくて見損ねました。
YouTubeの動画で概略だけ観ました。左上隅で大きな振り替わりがあり、白が左上隅の黒を取り込んで大きな地にし、その替わり黒は中央を厚くして、下辺から中央に飛んでいる白を攻めて得をしようとしました。それに対して白が下辺から中央の白をくつろげつつ、そして黒が構えた右辺に対し、右上隅の黒への攻めを見ながら荒らして行きます。そこが一段落した後、今度は右下隅に手を付け、黒は全て取ってしまう勢いで打ちました。しかし白のシノギが巧妙で下辺とからめながら、うまく打ち回し、中央上方で数子を取られた以外は、右辺を大きく荒らして下辺も活き、白が優勢でした。しかしヨセで黒が頑張り、まずは右辺の白をいじめて目二つで活かす形にしたのは大きなヨセでした。更には左下隅のヨセで白が頑張ったのがどうだったのか、黒が白3子を取ってかなり形勢は互角に近くなりました。その後また右上隅のヨセで白は頑張りきれずここでも黒が得をし、終わってみれば黒の半目勝ちという逆転劇でした。

NHK杯戦囲碁 鶴山淳志8段 対 本木克弥8段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鶴山淳志8段、白番が本木克弥8段の対戦です。この碁の焦点は序盤で白が黒のヒラキに打ち込んでからの一連の攻防でした。黒は上辺で肩付きをしてその1子を犠牲にして左辺に打ち込んだ白を封じました。しかしまだ白1子は完全に取られておらずその動き出しが後の焦点になりました。それをにらみながら白は更に黒の左辺下方にも打ち込みました。その後の攻防で、白は左下隅の黒を封鎖しました。黒はその包囲している白にツケコシを決行し戦いになりました。ここで白が隅で黒1子を抜いたのが活きを確保しかつ左辺の白にワタる手が出来た好手でした。この結果黒は中で活きることになりましたが、中央は白が厚くここで白が優勢になりました。その後白は下辺の黒を切り離して攻め、黒は眼が無いためどこかの白を取るか攻め合いで勝つ必要がありました。そこで黒は右辺下方の白を取りに行きました。ここは白が正しく打てばセキで、同時にセキ崩れで下辺の黒が取られていました。しかし白が間違え攻め合いは黒の1手勝ちとなり、黒は何とか危機を脱しました。しかし白も中央の黒を取り込んだので、まだ白の優勢は続いていました。その後黒は右上隅の白を攻めましたが白は問題なくしのぎ、形勢は盤面でいい勝負であり、黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 横塚力7段 対 王銘エン9段


本日のNHK杯戦の囲碁(コロナウイルスによる対局撮影中止で通常の放映時間だけでは足らなくなり、本日の0:50~2:20で放映)は、黒番が横塚力7段、白番が王銘エン9段の対戦でした。この碁の焦点は、右下隅~下辺~左下隅にかけての攻防で、黒が白の左下隅を包囲している壁に対して絶妙のノゾキを打った後の攻防でした。このノゾキはプロであれば誰もが普通に継がず反発することを考える所で、実際に王9段は左辺にかけて白を厚くして、切られても左下隅は下辺に連絡すればいいという考えで打っていました。しかし左辺では黒が地を稼ぎ、地合では黒が先行しました。白からすれば厚みを活かして、右下隅から下辺上方に延びる黒をうまく攻めて得を図りたい所でした。しかし黒は下辺の白を出切って、それを利かしにして整形し、へこむような感じで1眼を確保し、全体で上手く2眼を持ち、白の直接の攻めを封じました。この結果は、白の厚みが働かず、また中央の白もケイマ-ケイマで薄く、黒からここの切りを見られていました。その後左上隅で劫争いが始まりましたが、白が劫材で右辺に付けて黒がハネた後手を抜いたのがどうかという所で、黒は劫争いのさなかにドサクサで右辺の白を当たりとし、この結果右辺に付くはずだった白地がかなり減りました。白は挽回するためには中央にどれだけ白地を付けるかでしたが、白が取られていた左下隅の石を利用して締め付けようとしたのに、黒が手を抜いて中央を打ったため、取られていた白石は復活したものの、中央の白地がかなり減ってしまいました。最後に右上隅で波乱があり、白がハネたのに黒がハネ返さず後ろから覗くような手を打ち、ここから激しい戦いになりました。白は目一杯戦いましたが無理が多く、結局上辺の白が全部取られてしまって黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 黄翊祖8弾 対 原正和3段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が黄翊祖8段、白番が原正和3段の対戦です。原3段はNHK杯戦に初出場です。この碁のポイントは左上隅と左辺の攻防で、カカリに挟まれた黒が手を抜いて右上隅の白に押しを打ち白が手を抜いて左上隅のかかった黒にコスミツケました。黒は右上隅で2段にハネて厚くなりました。その後黒が左上隅を動き出しましたが、ここの攻防で、黒が普通はツケに白がハネて黒は伸びる所にハネて打ち、白が継いでその後何と手を抜いて白を挟み返している黒から飛びました。白は怒って白の急所に覗いて行きました。黒はどちらも継がずに隅にハネて行きました。黒が隅に潜り込んで地をかすって活きる展開かと思いましたが、通常隅から押さえる所で左辺側の2線に切り込んだのが上手く隅が白地に戻り、左辺の黒は小さく後手で活きなくてはならなくなりました。これは黒辛いので一子を犠牲にして再度左上隅に潜り込みましたが、白が中央で黒一子をポン抜いたのが厚く、かつ先手で左辺の黒2子を攻める展開になり、白の優勢になりました。その後白は右下隅の黒の二間ジマリに付けていって、結局黒を右下隅に小さく閉じ込めて活かし(最後はセキになりました)、優勢を保ちました。その後左辺の黒2子を黒が上手く生還させて挽回しましたが白も中央に厚みの余波で地が付き、最後は左辺で黒が手を入れなかったため、劫になりましたが、白の厚い碁形で黒に劫材が無く、ここで黒の投了となりました。実力派の黄8段に付け入るスキを与えなかった原3段がどこまで勝ち進むのか楽しみです。