NHK杯戦囲碁 鶴山淳志8段 対 本木克弥8段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鶴山淳志8段、白番が本木克弥8段の対戦です。この碁の焦点は序盤で白が黒のヒラキに打ち込んでからの一連の攻防でした。黒は上辺で肩付きをしてその1子を犠牲にして左辺に打ち込んだ白を封じました。しかしまだ白1子は完全に取られておらずその動き出しが後の焦点になりました。それをにらみながら白は更に黒の左辺下方にも打ち込みました。その後の攻防で、白は左下隅の黒を封鎖しました。黒はその包囲している白にツケコシを決行し戦いになりました。ここで白が隅で黒1子を抜いたのが活きを確保しかつ左辺の白にワタる手が出来た好手でした。この結果黒は中で活きることになりましたが、中央は白が厚くここで白が優勢になりました。その後白は下辺の黒を切り離して攻め、黒は眼が無いためどこかの白を取るか攻め合いで勝つ必要がありました。そこで黒は右辺下方の白を取りに行きました。ここは白が正しく打てばセキで、同時にセキ崩れで下辺の黒が取られていました。しかし白が間違え攻め合いは黒の1手勝ちとなり、黒は何とか危機を脱しました。しかし白も中央の黒を取り込んだので、まだ白の優勢は続いていました。その後黒は右上隅の白を攻めましたが白は問題なくしのぎ、形勢は盤面でいい勝負であり、黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 横塚力7段 対 王銘エン9段


本日のNHK杯戦の囲碁(コロナウイルスによる対局撮影中止で通常の放映時間だけでは足らなくなり、本日の0:50~2:20で放映)は、黒番が横塚力7段、白番が王銘エン9段の対戦でした。この碁の焦点は、右下隅~下辺~左下隅にかけての攻防で、黒が白の左下隅を包囲している壁に対して絶妙のノゾキを打った後の攻防でした。このノゾキはプロであれば誰もが普通に継がず反発することを考える所で、実際に王9段は左辺にかけて白を厚くして、切られても左下隅は下辺に連絡すればいいという考えで打っていました。しかし左辺では黒が地を稼ぎ、地合では黒が先行しました。白からすれば厚みを活かして、右下隅から下辺上方に延びる黒をうまく攻めて得を図りたい所でした。しかし黒は下辺の白を出切って、それを利かしにして整形し、へこむような感じで1眼を確保し、全体で上手く2眼を持ち、白の直接の攻めを封じました。この結果は、白の厚みが働かず、また中央の白もケイマ-ケイマで薄く、黒からここの切りを見られていました。その後左上隅で劫争いが始まりましたが、白が劫材で右辺に付けて黒がハネた後手を抜いたのがどうかという所で、黒は劫争いのさなかにドサクサで右辺の白を当たりとし、この結果右辺に付くはずだった白地がかなり減りました。白は挽回するためには中央にどれだけ白地を付けるかでしたが、白が取られていた左下隅の石を利用して締め付けようとしたのに、黒が手を抜いて中央を打ったため、取られていた白石は復活したものの、中央の白地がかなり減ってしまいました。最後に右上隅で波乱があり、白がハネたのに黒がハネ返さず後ろから覗くような手を打ち、ここから激しい戦いになりました。白は目一杯戦いましたが無理が多く、結局上辺の白が全部取られてしまって黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 黄翊祖8弾 対 原正和3段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が黄翊祖8段、白番が原正和3段の対戦です。原3段はNHK杯戦に初出場です。この碁のポイントは左上隅と左辺の攻防で、カカリに挟まれた黒が手を抜いて右上隅の白に押しを打ち白が手を抜いて左上隅のかかった黒にコスミツケました。黒は右上隅で2段にハネて厚くなりました。その後黒が左上隅を動き出しましたが、ここの攻防で、黒が普通はツケに白がハネて黒は伸びる所にハネて打ち、白が継いでその後何と手を抜いて白を挟み返している黒から飛びました。白は怒って白の急所に覗いて行きました。黒はどちらも継がずに隅にハネて行きました。黒が隅に潜り込んで地をかすって活きる展開かと思いましたが、通常隅から押さえる所で左辺側の2線に切り込んだのが上手く隅が白地に戻り、左辺の黒は小さく後手で活きなくてはならなくなりました。これは黒辛いので一子を犠牲にして再度左上隅に潜り込みましたが、白が中央で黒一子をポン抜いたのが厚く、かつ先手で左辺の黒2子を攻める展開になり、白の優勢になりました。その後白は右下隅の黒の二間ジマリに付けていって、結局黒を右下隅に小さく閉じ込めて活かし(最後はセキになりました)、優勢を保ちました。その後左辺の黒2子を黒が上手く生還させて挽回しましたが白も中央に厚みの余波で地が付き、最後は左辺で黒が手を入れなかったため、劫になりましたが、白の厚い碁形で黒に劫材が無く、ここで黒の投了となりました。実力派の黄8段に付け入るスキを与えなかった原3段がどこまで勝ち進むのか楽しみです。

NHK杯戦囲碁 古谷裕8段 対 沼舘沙輝哉6段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が古谷裕8段、白番が沼舘沙輝哉6段の対戦です。古谷8段は5年ぶり、沼田6段は初出場です。この碁の焦点は左辺と左下隅の攻防で、白が攻防の最中に手を抜いて上辺のいい所に打ったので、黒からは壁石の白を厳しく攻めたい所でした。その通り黒が厳しく打ったのですが、白が柔らかく打って、2子を抜かせて打ちました。さらにシノギで左辺で2線に付けた時、黒は左上隅の白に付けかえしました。この攻防で黒に疑問手があり、多少左上隅の地をかすり取ったものの左辺の白と左上隅がつながって厚くなりここで白がリードしました。その後は非勢の黒が右辺の攻防や左下隅の置きなどの勝負手を連発しましたが白がすべて的確に受け、地合は盤面でいい勝負で黒はコミが出せず投了となりました。

NHK杯戦囲碁 山城宏9段 対 富士田明彦7段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山城宏9段、白番が富士田明彦7段の対戦です。この碁の最初の焦点は左下隅で、黒が下辺から隅の黒を包囲している白の壁石を攻めようとしましたが、白も下辺で挟み返す展開となり、ねじり合いとなりました。ここで黒が切れない断点を切って白に1目取らせ、その代償として当たりを2回利かそうとしました。しかし白はすかさずカウンターで下辺の黒の一間トビに割り込んで行きました。結果は劫になり、白は左辺の黒への打ち込みを劫材に使い劫に勝ち、黒の7子を取り込みました。この結果は白が得をしており、黒は白がカウンター攻撃をして来た時に受けずに左辺を連打していた方が優ったようです。白はその後右下隅の三々入りで先手で地を稼ぎ、右上隅の両ガカリに回り好調でした。白は右辺でも二間ビラキで地を取り、地合は完全に白のリードでした。その後黒は上辺に付けていって策動しましたが、白に強く受けられて後続手段が無く、白が勝勢になりました。その後黒は中央の3子をうまくしのいで差を縮めたかと思いましたが、その後白にその中央の黒への攻めと右下隅の黒の地を削減する手を見合いにされ、差は縮まらず黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 小山空也4段 対 佐田篤史4段


本日のNHK杯戦は黒番が小山空也4段、白番が佐田篤史4段の対戦です。この碁の焦点は右下隅の劫争いでした。結局白がこの劫に勝って右下隅に大きな地を得たのですが、黒が代償として得たのが右上隅ですが、元々黒の構えだった所で右下隅に比べると小さく、更には後に出て来るように上辺とからめて右上隅で活きる手が残り、かなり黒には不満な別れで白がリードしました。その後の折衝でも黒が紛れを求めて難しく打ってくるのを白が冷静に対処し、左下隅から左辺にもかなりの地がまとまり、また多少は黒地が付きそうだった中央も白がうまく消して、むしろ白の中地が付いては白のリードを黒がひっくり返すことは出来ませんでした。白の中押し勝ちでした。

NHK杯戦囲碁 鈴木歩女流棋聖 対 安斎伸彰7段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鈴木歩女流棋聖、白番が安斎伸彰7段の戦いです。序盤は左上隅で黒の三々入りに、白が応対の途中で右下隅の小目に付けていったのが研究済みなのでしょうが面白く、これがシチョウアタリになって左上隅で黒1子をシチョウに取り、全体に黒の実利、白の厚みという展開になりました。この碁の焦点は右辺の攻防で、白が黒のシチョウアタリに天元の左斜め上に打った手がちょっとAI風でしたが、右辺の打ち込みに役立ちました。黒は右辺で白が三間に開いて右上隅の黒に迫ったのに、逆にその真ん中に打ち込み、のっぴきならない戦いになりました。しかし一段落した結果は白が右辺で黒3子を取り込んで20目以上の地を持って治まり、対して黒が得たのは上辺の白地を少し食い破っただけで、右上隅の黒の一段はまだ治まっておらず、ここで白が優勢になりました。白はその後も左辺を大きくまとめ、黒は下辺の白地を少し減らしたぐらいで白の優勢は変わりませんでした。最後に左下隅で劫が発生して一瞬事件起こる起きたかと思いましたが、白が若干譲歩して手厚くまとめ、白の中押し勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 大西竜平5段 対 蘇耀国9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が大西竜平5段、白番が蘇耀国9段の対戦です。この碁は何と言っても大西5段の石の捨て方、大局観の素晴らしさが光りました。まずは左上隅で一度劫争いになった白を切っている5子をあっさり捨てました。白が劫争いの中で左上隅から脱出するのに何手もかけており、白が取りきる間に黒は上辺と左辺を連打しており、これで十分という判断でした。さらには右下隅で、ここは黒が先着して黒石の方が多かった所ですが、ここもあっさり捨て、代償に右辺でポン抜きを打ちました。この場合、右下隅を白が完全に取りきれているなら白も打てましたが、黒からダメ元の劫にする手が残っていたため、これで黒がリードしました。ヨセで中央でのっぴきならない劫が発生しましたが、劫材は黒が多かったため、左上隅の劫材に白は受けずに劫を解消しました。しかし、元々取られていた5子が白を取りながら復活し、なお周辺に対して先手で利かす手も残り、これで黒の勝ちがほぼ確定しました。作って黒の4目半勝ちでした。

NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 呉柏毅 5段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が伊田篤史9段、白番が呉柏毅 5段の対戦でした。布石は黒が右上隅を大高目、右下隅が目外しと意欲的な布石です。私の記憶では、伊田9段は時々こういう布石を打つように思います。右下隅で白が三々に入り黒が大ゲイマにかけた時に白は手を抜きました。右上隅でも同じ形になり、今度は白は受けて治まりに行きましたが、黒はじっとこの白への攻めを見ました。その後白が下辺の中央に打ち込んでいった時、黒は左側から付けました。これに白は受けずに半分取られていた右下隅を動き出しました。結果的に振り替わりになり黒は下辺で連打し、白は右下隅を脱出しました。しかし脱出した白にまだ眼が無く、黒は上下の白の弱石をにらむ展開になりました。その後左下隅で黒が両ガカリして白を攻め、白が中央に出て行きました。その白を黒が切断を狙いましたが白は取られていた下辺の利きを利用して左下隅に地を持って治まりました。その後黒が右辺上下の白を攻めに行きましたが、白は再三手を抜いて左上隅の地模様を拡げました。黒はそこでまず右辺下方の白を攻めましたが、白がじっと黒の2子を当てたのがしぶとく、黒が継ぐとダメヅマリになり、下辺の白が攻め取りになって締め付けが利き、右辺下方の活きが確保されました。そこで黒は今度は上方を攻めました。ここは劫になったのですが白が劫争いの最中にまたも手を抜いて左上隅を確定地にしました。結局劫は黒が勝ち、白は右辺で振り替わり右辺下方の石と連絡しました。この収支は黒の右上隅の実利が大きく、形勢は黒に傾きました。白は黒の中央の孤立した黒を攻めこれを取ろうとしましたが、白もあちこち薄みがあり、結局黒が白の数子を取り込んでシノギました。こうなる地合で白は足らずここで白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 清成哲也9段 対 謝依旻6段


本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が清成哲也9段、白番が謝依旻6段の対戦です。この二人の碁にしては激しい戦いが無く、唯一右下隅での折衝で中央で黒がポン抜き、代償で白が右下隅の黒を切り離して封鎖するというのがありました。しかしこの黒は活きており、そうなるとポン抜きの分だけ黒がリードしている感じでした。しかし白はこのポン抜いた黒4子を上手く攻め、上辺に50目に近い大きな地を作ることに成功しました。その後ヨセでも白が上手く立ち回り、細かいながら白勝ちと思われた終盤で、黒の下辺左での飛びワリコミという勝負手が出ました。白は強く上から受けましたがこれには白の見落としがあったようで、結局劫になりました。この劫に白が負けると下辺の白地はほぼ無くなって逆に黒地が付きます。しかし黒の劫立ては上辺にほぼ無数にあり、結局白は劫を解消しましたが、代償に白の一等地の上辺を大きく荒らされてしまいました。これで白の投了となりました。清成9段の勝負を最後まで諦めない粘りと踏み込みが見事でした。