シオドア・スタージョンの「深海の宇宙怪獣」(原子力潜水艦シービュー号のもう一つのノベライズ版)

「原子力潜水艦シービュー号」のもう一つのノベライゼーションである「深海の宇宙怪獣」を読了しました。作者はシオドア・スタージョンで、日本語訳が福島正実です。偕成社から出ていたSF名作シリーズ全28巻の13番目です。このシリーズはバローズが3作、ウェルズが2作、そして宇宙家族ロビンソンのノベライズ版もあり、比較的分かりやすいSFを集めているように思います。子供の時家にこのシリーズの「超能力作戦」がありました。
読んでみるとこのノベライズ版はTV版の第2シーズンの第4エピソードと第3シーズンの第1エピソードの話ほぼそのままです。(宇宙からやってきた巨大な脳が科学者やクレーン艦長を操ってシービュー号の乗っ取りを企む話と、あるマッドサイエンティストがネルソン提督にそっくりなサイボーグを作ってシービュー号に送り込み、世界を自分のものにしようとする話)確かにこの2つの話はシリーズ全体の中では良く出来た方の話なのでこれを選んだのはまあいいとして、スタージョンほどの作家が書いているにもかかわらず、ストーリーはほぼTV版のままです。にも関わらずどこにも元の脚本家の著作権表示がありません。本の中にはK. Yanoという人が著作権の交渉をしたようなことが書いてありますが、これは翻訳家兼著作権エージェントであった、故矢野浩三郎氏のことだと思います。
実はこのノベライズ版はご本家のスタージョンのビブリオグラフィーを見ると、日本語版だけしか出版されていないようでかなり奇妙です。もしかするとスタージョンの名前だけ借りて、実際は福島正実氏が書いたのではないかと勘ぐりたくなります。(この福島氏の翻訳?もちょっと変で、チーフ・シャーキーが「ようがす」といった太鼓持ちみたいなセリフを吐いています。)しかし、チップ・モートンのキャラクターは、スタージョンの映画版ノベライズのそれに近く(TVではモートンは沈着冷静な副官ですが、スタージョンの小説では一言多い、頭の回転が悪い人間に書かれています)、そういう意味ではやはりスタージョンが書いたのかなとも思います。ただ、映画のノベライズではかなりスタージョンの独自色が出ていましたが、こちらはほとんど脚本のままで、違うのは2つのエピソードをつなぐため、ネルソン提督がノーベル生物学賞を受賞するという話が出てくる所だけです。やはり福島氏の代作ではないかというのが私の仮説。あの人ならやりかねません。
ちなみに第2シーズンと第3シーズンの話であるのに、表紙のシービュー号は観測窓が上下に分かれている第1シーズンバージョンです。(もっともこの頃日本で売られていたシービュー号のプラモデルはすべてこの第1シーズンバージョンでした。)