金原亭馬生の「笠碁、文違い」

jpeg000 141今日の落語は、金原亭馬生(きんげんていばしょう)の「笠碁、文違い」です。
馬生は、古今亭志ん生の長男で、志ん朝の兄です。志ん生からは稽古をつけてもらったことはないそうですが、血は争えないというか、自然なおかしみとかダイナミックな所作が志ん生に似ているように思います。惜しくも1982年に54歳の若さで亡くなりました。
「笠碁」はこれも囲碁にまつわる碁敵同士のお噺ですが、まくらが、志ん朝が語った「碁どろ」のものとまったく同じ(囲碁を五目並べと間違えてトンチンカンな助言をするのと、隅の石が危ないと言うのが、生き死にではなく単に落っこちそうだからという噺です)でした。元は志ん生のまくらなんでしょうか。
「文違い」は、内藤新宿の女郎のお杉が二人の客をうまくだまして、五十両のお金をせしめるが、そのお金を芳次郎という色男に眼病の薬代としてそっくり渡す。芳次郎がいなくなった後に手紙を読むと、眼病だというのは口実で、お杉からお金をせしめる手段だったことがわかる。一方で、お杉に騙された客の一人も、芳次郎からお杉宛に来た手紙を見て、騙されたことを知り…といった騙し騙されが重層的になったお噺です。

白井喬二の「富士に立つ影」[1](裾野篇)

jpeg000 147白井喬二の「富士に立つ影」を読書開始。第1巻を読了。1924年から1927年にかけて報知新聞に連載された、ちくま文庫版で全10巻に及ぶ大河時代小説です。
築城家で赤針流の熊木家と賛四流の佐藤家の三代68年、江戸から明治にかけての確執を描くものです。
第1巻の「裾野篇」では、富士の裾野の村で、構築される予定の調練城を巡って、赤針流熊木伯典と賛四流佐藤菊太郎の二人の築城家が、築城の詳細を巡って、現代風に言えばコンペをやって論争します。言葉による討論は互角で決着が付かず、決着は四種類の実地検分をもってつけられることになります。この築城家というのはフィクションで、実際の歴史ではこんな築城家の流派といったものは存在せず、ましてやその築城家が実際の築城を巡って論争するなんてことはなかったと思いますが、このフィクションの築城論争がまずとても面白いです。また、熊木伯典(悪役)と佐藤菊太郎(善役)のキャラクターの対比が見事で、特に熊木伯典の憎々しさの描写は見事です。
実地検分では、四種類のうち、三種類で佐藤菊太郎が優勢で、勝利間違いなしと思われていたのですが…

裾野篇 江戸篇 主人公篇 新闘篇 神曲篇 帰来篇 運命篇 孫代篇 幕末篇 明治篇 総評