三遊亭圓生の「淀五郎、紀州」

jpeg000 176本日の落語、三遊亭圓生の「淀五郎、紀州」。
「淀五郎」は「中村仲蔵」と似ていて、というかこの噺に中村仲蔵自身も登場しますが、仮名手本忠臣蔵の歌舞伎を演じる役者の噺です。若手の役者の澤村淀五郎が市川團蔵に、塩冶判官の役に抜擢されたがいいが、舞台ではその團蔵にまともに演技の相手にしてもらえないで悩む噺です。その淀五郎の相談に乗ってアドバイスするのが中村仲蔵です。
「紀州」は先日、金馬でも聴きましたが、物音が人の言葉に聞こえるという聞きなしの噺で、圓生はこの聞きなしの噺を徹底的に膨らませています。もっとも本題の噺は実に大したストーリーがないので、そうせざるを得ないのでしょうが。金馬よりさすがにうまいと思いました。

小林信彦の「ムーン・リヴァーの向こう側」

jpeg000 184小林信彦の「ムーン・リヴァーの向こう側」読了。1995年の作品で、「ドリーム・ハウス」「怪物がめざめる夜」と合わせて、東京三部作だそうです。
話の内容は先日読んだ「イーストサイド・ワルツ」と重なる部分が多いです。ただ、結末が「イーストサイド・ワルツ」みたいに暗くないので、こちらの方が好感を持てます。といいつつも、この作品にも下町と山の手を巡ってのいつもの小林信彦の持論が噴出してきて、ああまたか、とうんざりした気になります。タイトルの「ムーン・リヴァー」も、たぶん隅田川(大川)のことなんだろうなと思って読んでいたら、その通りでした。正直な所、小林信彦の恋愛小説は概してうまくないですねえ。