本日の落語は、三代目桂三木助の「へっつい幽霊、崇徳院」。
「へっつい幽霊」は博打で300両あてた男が、そのお金を皆にせびられるので、盗られないようにへっつい(かまど)の土に塗り込めたが、その晩河豚に当たって死んでしまう。そのへっついを買ったお客の所には、必ずその男の幽霊が出るので、皆そのへっついを返してしまう。そうしていると、遊び人の熊さんが、幽霊なんか気にしないと言ってそのへっついを引き取り、自分の家に持って帰ろうとすると、拍子でぶつけた時にへっついの一部が割れて、中から300両のお金が出てきて…というお噺です。
「崇徳院」は、ある時、上野の清水の観音堂で、若旦那と器量よしのお店の娘が出会い、娘は崇徳院の「瀬にはやみ岩にせかるる滝川の」をいう短冊を託す。若旦那とその娘はどちらも恋煩いで寝込んでしまい、それぞれの親が人を使って相手を探して…とうお噺です。
三代目桂三木助は「芝浜」が有名ですが、今回初めて聴きました。なかなかいい味を出していると思います。
日別アーカイブ: 2016年7月18日
白井喬二の「富士に立つ影」[8](孫代篇)
白井喬二の「富士に立つ影」第八巻、孫代篇を読了。佐藤兵之助とお園の子、兵吾は武士を憎み、職人とし生きるため、船大工の鳥ノ居頼吉の元で修行に励んでいます。しかし、頼吉がふとしたことで、黒船建造についての論争で敗れてしまい、船大工を辞めることになったため、結局侠客の上冊吉兵衛の元に身を寄せることになります。その吉兵衛が、ある足が不具である侍が敵討ちに襲われるのを守ることになり、兵吾もその役目を果たしますが、その侍は実は兵吾の実の父親である佐藤兵之助でした。兵之助は熊木公太郎を鉄砲で撃って殺害した時に、自身も公太郎の知り合いの猟師の銃の弾を膝に受けて、不具者になってしまっていました。兵吾はふとした弾みから、守っている侍が実の父であることを知り、ようやく親子の対面を果たします。
一方、佐藤兵之助の正妻の子である光之助は幕府の品川への砲台建設の現場に採用されて、工事資材の監督をしています。光之助は、元々城太郎というのですが、熊木公太郎の息子も城太郎というのを知って光之助に改名しようとします。そうこうしている内に、佐藤菊太郎は老齢のためついに命を落とします。
また、熊木公太郎の息子である熊木城太郎ですが、公太郎に似た鷹揚な性格に見えて父親とは異なっており、特に二重人格というか躁鬱病みたいな所があって、「勝番」と呼んでいる調子の良い時は、武術で師範を負かしてしまう程の腕になるのですが、「負番」と呼ぶ調子の悪い時には、素人にさえ負けてしまいます。この熊木城太郎が、公太郎の親友であった大竹源五郎の助けを借りて、佐藤兵之助を親の仇としてつけねらいますが、「負番」の時が多くて、なかなかうまくいきません。そうこうしている内に、大竹源五郎は、公太郎の妻であった貢に惚れてしまった自分を恥じて、とうとう自殺してしまいます。それを知らずに、熊木城太郎はある日「勝番」になった勢いをもって、ついに佐藤兵之助と佐藤光之助の親子が会談している場所に踏みこんで仇を討とうとします…