落語ではなくて怪談噺、今日も三遊亭圓生の「真景累ヶ淵~深見新五郎」です。新五郎は新左衛門の子供ですが、親父に愛想を尽かして家を飛び出していました。そのうち心細くなり家に戻ってみたら、屋敷はすっかり荒れ果てていて、親父は乱心を起こして討ち取られ、お家も廃絶となったことを知ります。墓の前で腹を切ろうとしていた所を、丁度通りがかった質屋の下総屋の主人に止められ、訳を聞かれて話し、新五郎は下総屋で働くことになります。新五郎は如才なく働き、人当たりもいいのですっかり気に入られます。その内に、新五郎は下総屋の女中でお園というのがすっかり好きになります。ところが、お園の方はいくら言いよられても、新五郎のことが虫が好かず側に寄られるのも嫌。それもその筈、お園は新左衛門に殺された宗悦の娘でした。そうこうしている内にお園は病気になりましたが、新五郎は一生懸命看病します。その甲斐あってお園は回復しましたが、新五郎は看病したことを恩に着せてお園に迫ります。ですがお園はそれでも相手にしません。その後、蔵の塗り替え工事がありましたが、工事で人が出入りする隙を狙って新五郎はお園に再度言いより、とうとうお園を積んであった藁の上に押し倒します。ところが藁の中には藁を切る押し切りという包丁が入れてあって、お園はその包丁に身を切られて命を落とします。新五郎はこうなっては、とドサクサに紛れ、店から100両という金を盗んで逐電する…といった噺です。
日別アーカイブ: 2016年7月14日
白井喬二の「富士に立つ影」[5](神曲篇)
白井喬二の「富士に立つ影」第五巻神曲篇を読了。日光霊城審議で勝利した佐藤兵之助は、早速築城に取りかかりますが、半年ほど根を詰めて働いたのが体に来て、神経痛を患います。その療養に、那須の温泉宿に逗留していたところ、熊木伯典の娘お園が何故か兵之助を訪ねて来ます。その用件は、熊木の家にある牡丹群鳥の壺(昔佐藤菊太郎がその壺の偽物を誤って割ってしまった)を佐藤家に売り、その代償として、日光で囚われている上田三平を解放してもらうことでした。兵之助は断りますが、何度も話を重ねている内に、二人はお互いに惹かれ合うようになり、ついには男女の仲になってしまいます。
那須の温泉宿にはお園の後を追って伯典もやって来ます。そうこうしている内に、那須で跳梁していた山賊を討つことになり、その指揮を兵之助と伯典が執り行うことになります。山賊の山狩りはうまく行きましたが、そのドサクサで兵之助と伯典は斬り合うことになり、伯典は足を滑らせて谷に落ち、重傷を負います。それにつけこんだ兵之助は、伯典の昔の悪を白状させて念書を取ってしまいます。
実は熊木公太郎も前からこの那須の地に来ていて、樵や川漁師の真似ごとをして暮らしていたのですが、山賊とも顔なじみになっており、山狩りにあった山賊に頼まれて、それとは知らず兵之助に立ち向かうことになり、兵之助の刀を曲げてしまいます。
兵之助はお園との関係が深くなり、病気は治ったにも関わらず日光に戻らず那須にぐずぐずしています。そこに日光から兵之助が戻ってこないのをいぶかって調査のためにある侍がやって来ます。兵之助はふとしたきっかけでこの侍を斬り殺してしまいます。
一方、熊木公太郎は、隣の小屋に住む貢といい中になり、一緒になる約束をします。
といった具合ですが、日光霊城審議で鮮やかに勝った佐藤兵之助が、そのまま栄光に満ちた日を送るのかと思ったら、色々と暗雲が立ちこめ、ついには人殺しを犯してしまいます。一方で破れた熊木公太郎は、清廉潔白に暮らしていきます。