白井喬二の「富士に立つ影」第九巻、幕末篇読了。
熊木城太郎は、糊口をしのぐために、赤松浪人団に参加します。そこの副隊長がこともあろうに、佐藤光之助でした。城太郎は光之助から、公私の区別をつけることを条件に入団を許されます。城太郎は、佐藤兵之助を一旦は討ち取ったと思っていましたが、死んだのを確認しなかったため、時が経つにつれて、実は兵之助は生きているのではないかと思うようになります。そのことを、城太郎は光之助に何度も問いただし、光之助を辟易させます。そうこうしている内に、光之助は隊長である赤松総太夫と、お八重という女性を巡って険悪になり、ついには袂を分かつことになりました。その時に団員に、光之助か総太夫のどちらについていくか問うた所、光之助に付き従うものは一人もおらず、ただ公太郎だけが歩みでます。このことを光之助は感謝し、とうとう城太郎に、兵之助が生きていることを告げます。
お八重と光之助は夫婦になりますが、城太郎は兵之助を探して江戸中を彷徨うことになります。兵之助は、音羽に潜んでいましたが、そこで火事があったのをきっかけに、城太郎に居場所を突き止められてしまいます。ですが、すぐにお八重と光之助の新居に移り、無事に城太郎をまくことができました。
兵之助はしばらく平穏に暮らしますが、老残の身になって、今は昔のお園とのことだけが懐かしくなり、お園に会いたくてたまらなくなり、ついには一人でお園に会いにいきます。お園に会って、今こそ愛していることを告げたのですが、老いたお園は今さらと、兵之助の告白を一笑に付します。失意の兵之助は帰りに懐かしい湯島天神に参りますが、そこで熊木城太郎に遭遇し、今度こそ仇を討たれてしまいます。
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