NHK囲碁新春スペシャル


今日のNHKの囲碁の新春スペシャル、「定石対決」というのがあって、プロ同士の対戦に出題されたのは結果を白石だけで並べたものを再現するというもの。これ自体は確かに難しいですが、出題されたのは「大ナダレ定石」の一つの形です。びっくりしたのは右の女性プロ初段が、「この定石は存じ上げません」と言ったこと。しかも大ナダレ定石の途中の変化の多い所が分らないのではなく、小ナダレ定石と大ナダレ定石の分岐点で止まっていたので、そもそもナダレ定石というのをまったく知らないようでした。別にプロは定石を覚えるのに注力しなくてもいいと思いますが、ナダレ定石を知らないということは、呉清源さんとかの時代の棋譜をほとんど並べたことがないということでしょう。(ナダレ定石が生れたのは1930年代の戦前、そして戦後も流行廃りはあるものの{プロはナダレ定石や大斜定石のような手順が長い定石は嫌う傾向にあります。}盛んに打たれ多くの変化形が生まれました。)それはいくらAIの時代だと言ってもプロとしては恥ずかしいことだと思います。(故に武士の情けで名前はぼかしました。)なお、左の木部夏生三段はちゃんと最後まで再現出来ていました。

なお、左の棋譜は、1958年4月30日~5月1日の第1期日本最強位決定戦で、黒番が木谷実9段、白番が呉清源9段(互先、コミ無し)の棋譜で、実に右下隅、左下隅、左上隅の3隅で大ナダレ定石が出現しています。(白16は黒5の上、黒27は白26の右)