村上もとかの「JIN-仁-」

村上もとかの今度は「JIN-仁-」を読みました。この漫画はこれが連載されていた頃はもう漫画とは離れていたので、これまで未読です。幕末というと、大衆小説家達がもっとも取上げた時代です。そして登場する坂本龍馬、勝海舟、西郷隆盛、徳川慶喜、近藤勇、沖田総司、高杉晋作という誰でも知っている人物との絡みで話を作っていくというのも、大衆小説の伝統に従ったものです。もっとも坂本龍馬が司馬遼太郎が描いたものほぼそのままのキャラクターなのがちょっと難点ですが。まあタイムスリップものというのは沢山ありますが、この漫画では最先端の脳外科医が幕末にタイムスリップするという設定がある意味奇抜です。そして、何とその時代の日本でペニシリンを作り出してしまう、というのがまあ荒唐無稽ですが、楽しめる話でした。医学の関わるシーンも専門家の監修を受けたきちんとしたものであり、さすがに村上もとかで、手抜きがまったく無いです。

ジョージ・オーウェルの「1984年」

ジョージ・オーウェルの「1984年」を今さらながらに読了。オンラインの英会話で今この本を読んでいるという話をしたら、驚くべきことにほぼ全ての先生が「昔読んだ」と言いました。英語圏では教科書にも載っていたようです。その位英語圏では有名な本です。しかもこの本が描写しているディストピア(ユートピアの反対)が、長らく共産主義国に対するステレオタイプなネガティブイメージとしてある意味悪用されました。良く読めば、共産主義国に限らずあらゆる体制の国で、このような監視社会の未来があり得た筈ですが。現実問題として、例えばシンガポールでは、国が建てたアパートに住む人は、一日何回トイレに行ったかを政府によってモニターされています。また中国では、例えば上海では、ありとあらゆる所に監視カメラが置かれており、交通違反をするとたちどころに逮捕されます。そういう意味で残念ながら架空の未来の話ではなく、既に一部が実現してしまっています。それから興味深かったのは、この世界では歴史が絶え間のない書き換えの対象となっており、本当の歴史は何だったのかという努力が100%抑圧されています。これもここまでひどくなくとも、フェイクニュースが氾濫する現在既に起きてしまっていることのように思います。ただあまりに過大評価されているようにも思いますが、英語圏の人と話す上では読んでおくに越したことはない本と思います。

村上もとかの「龍 -RON-」

村上もとかの「龍-RON-」全42巻を16年ぶりくらいで読みました。この漫画はビッグコミックオリジナルで連載していたのをリアルタイムで読んでいましたが、実に1991年から2006年まで15年以上続いた漫画で、かつストーリーもあまりにも壮大で、連載終了後にまとめて読み直してやっと全体が分ったという感じでした。それで一度読むとなかなかもう一度読めなくて、16年が経ちました。最初の方は「六三四の剣」の延長線上にある剣道漫画っぽいですが、主人公が日中混血と分ったあたりから、どんどん複雑化していきます。また昭和史の有名人が多数登場し、北一輝、甘粕正彦、鮎川義介、石原莞爾、周恩来、毛沢東、杜月笙、魯迅、等々豪華です。またもう一つのラインとしてある意味昭和映画史的な面もあって、ヒロインの田鶴ていが女優から日本初の女性監督になりますが、このていは実在の女性監督である坂根田鶴子がモデルです。またていと絡む名監督として溝口健二、小津安二郎、山中貞雄をモデルにしたキャラクターが登場します。以前読んだ時はそれらの監督の映画をほとんど観ていませんでしたが、今回は例えば小津安二郎をモデルにした監督のエピソードでは、映画の一シーンのスチール的なページを見ただけで「ああ小津安二郎だ」と分りました。ちなみに村上もとかのお父さんは映画会社の美術担当でした。この漫画の随所に映画のスチール的な印象的なコマが登場します。この漫画の難点としては、主人公があまりに理想的人物過ぎて実在感に欠けるというのと、主人公が自らの生命を賭け、また多くの人の命を犠牲にして守り抜いた黄龍玉璧(高い放射能を持った物質で作られた、中国の皇帝の権威を支える玉璧)の秘密が、結局アメリカが核兵器の開発に成功して、ある意味無意味になってしまう、ということです。とはいっても、この漫画は白井喬二以来の日本の大衆小説の伝統の上に生れた漫画史上で強烈な輝きを放つ傑作であることは間違いありません。

アウター・リミッツの”Long Distance Call”

アウター・リミッツの”Long Distance Call”を観ました。今日はビリーの5歳の誕生日ですが、ビリーを溺愛しているお祖母ちゃんは、ビリーにオモチャの電話機を贈り、これを使えばいつでもお祖母ちゃんと話しが出来ると説明します。しかしすぐにその後、お祖母ちゃんは倒れ、そのまま危篤状態になります。臨終の直前に、息子はある女性に取られてしまったので、ビリーが本当の自分の息子だと言って息を引き取ります。その後ビリーはオモチャの電話機で誰かと話していますが、それは単にそういう振りをしているだけだと両親は思っていました。しかしある日ビリーは車の多い通りにいきなり飛び出し、危うく車に轢かれかけます。車の運転手がビリーに理由を聞いたら、誰かからそうしろと言われたとビリーは答えます。そして深夜にオモチャの電話機でビリーが誰かと話しているのを聞いた母親は、そっと近付いて電話機を奪い、そこから本当にお祖母ちゃんの声が聞こえるのに驚き、電話機を落して壊してしまいます。それを見たビリーは家を飛び出し、家の前の池に飛び込み、溺死します。救急隊員が必死で蘇生させようとしますが、思わしくありません。父親はビリーの部屋に行き壊れた電話機でお祖母ちゃんに話しかけ、ビリーの人生はこれからなんだ、ビリーを返してくれと必死に頼みます。その直後奇跡が起き、ビリーは蘇生しました。
ビリーを演じている子役が非常に上手いんですが、何とこの子は宇宙家族ロビンソンのウィル・ロビンソンを演じたビル・マミーでした。宇宙家族ロビンソンの時、11~12歳ぐらいだったと思いますので、年齢は合っています。

アウター・リミッツの”Specimen: Unknown”

アウター・リミッツの”Specimen: Unknown”を観ました。
宇宙ステーションの外壁に奇妙な茸のようなものが付着したのを捕まえて培養したら、それは花になりましたが、種子または胞子のようなものを撒散らして増えるのと同時に、花の中心から何かの毒ガスを出し、それを吸った動物はヘモグロビンが著しく減少し死に至ります。一人の研究者がそれで死に、残った4人は地球に帰還することにしましたが、途中でその宇宙植物が入れ物から出て増え、ガスを撒散らし4人は瀕死の状態になります。地球の基地側は、一旦その帰還ロケットをミサイルで撃って爆破することを考えましたが、中の乗組員の一人の奥さんがそこにいたため、情にほだされた司令官はロケットに着陸を命じます。しかし着陸のショックでその植物がロケットの周りに撒散らされ、乗組員を救助にいった者もガスにやられます。それでも何とか乗組員を救急車に乗せて病院に送った後、残った司令官と乗組員の一人の奥さんは、そこを脱出しようとしますが、車のエンジンの中まで植物が入り込み、エンジンがかかりません。植物に取り囲まれて絶体絶命の時に、雨が降り出します。そうするとその植物は悲鳴を上げながら全部やられてしまう、という何ともご都合主義的な終わり方でした。この程度のストーリーならトワイライト・ゾーンのように30分枠で十分だと思います。

ウルトラQの「富士山SOS」

ウルトラQの「富士山SOS」を見ました。富士山が爆発しそうということになって、いつもの三人組が富士の麓に向かいます。富士の樹海には幼い頃ここで行方不明になったタケルという青年がまるでターザンのように暮していました。そんな中岩石で出来た怪獣が湖から現われ、一度ダイナマイトで吹っ飛ばされても再度結集して再生し、タケルを襲います。タケルは何と単身怪獣に立ち向かい、岩石の中から生命の核となっている光る球を取り出し、それを警官から借りた拳銃で撃って怪獣を倒します。怪獣の造形は悪くはなかったですが、ちょっとお話が単純過ぎです。和製ターザンの名前はタケルでしたが、これは後の怪獣王子と同じです。怪獣王子も幼い少年がある島に一人取り残されて生き延びて恐竜を従えてという話で、もしかすると原案はこのエピソードかも、と思いました。ドラマの中で怪獣の名前は出てきませんでしたが、一応ゴルゴスということになっているようです。

NHK杯戦囲碁 張栩9段 対 許家元9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が張栩9段、白番が許家元9段の対戦です。序盤の打ち方で面白かったのは、右上隅で黒が二間に低く挟んだのに、白が13の5にケイマした手で、初めて見ました。個人的には黒が上辺を受けて黒地がほぼ固まったので打ちにくい手に思いました。局面が動いたのは白が下辺左方に深く打ち込んでからで、結果として白は下辺を捨て石にし、左辺の黒を取りました。この結果は黒が一部左辺を突き抜くことが出来ましたが全体では白の成功で形勢は白に傾きました。その後黒は白の右下隅の構えを固めてもいいと付けたのですが、白は跳ね出して反発しました。しかし結局跳ね出した石からの一団が取られ、白は損をしました。しかし白から当てが利いて厚くなり、右辺の黒が危なくなりました。ここで右辺の黒をまともに逃げ出したのがまずく、読みに抜けがあり結局劫にもならず全部取られてしまいました。最初から尻尾を捨てて本体を逃がすか、あるいは劫に持ち込めれば黒が有望でした。その後ヨセで黒が猛追しましたが、右辺の損が大きく、結局白の2目半勝ちになりました。

トワイライト・ゾーンの”The Prime Mover”

トワイライト・ゾーンの”The Prime Mover”を観ました。小さなバーを経営しているエース・ラーセンはけちなギャンブラー気取りでしたが、ある日仕事仲間のジンボが念動力を持っていることを知ります。ジンボ自身は過去にいじめられたりしたことがあるためその能力を使わないようにしていましたが、エースはその能力をギャンブルに悪用しようとします。二人は早速カジノに出かけ、ルーレットやサイコロころがしで勝ち続け大金を手にします。いつまでもギャンブルを止めないエースに、恋人のキティーはあきれて家に帰ってしまいます。ジンボは念動力を使いすぎるとひどい頭痛がするため、ホテルのベッドで休んでいましたが、エースはそんなジンボにアスピリンを飲ませ、ギャングの親分を呼び出してさらに大きなギャンブルをやろうとします。しかもキティーの代わりに、煙草売りの女性に金をやって恋人に仕立てます。そんな彼に目を覚まさせようと、ジンボは最後のすべての金をかけたゲームでサイコロの目を外します。エースは一文無しに戻ります。ジンボは頭の中でヒューズが飛んでしまったと言い訳をします。エースは気を取り直してキティーにあらためてプロポースしますが、キティーはコインをトスして裏か表かの賭けをします。その結果は不明でしたが キティーはプロポースをOKします。それを見ながらジンボはこっそり床のホウキを動かして彼の能力が健在であることを示します。
何というか話の展開がありきたりで、結末も予想出来るものでイマイチでした。

アウター・リミッツの”The Children of Spider County”

アウター・リミッツの”The Children of Spider County”を観ました。ある時、全米で4人の色々な分野で活躍する天才的な若者が突然同時に失踪します。彼らは全員、スパイダー・カウンティで同じ年月に生れ、かつミドルネームに「エロス」というのを持っていました。このことから政府の調査期間は、エイリアンによる拉致事件ではないかと推測します。実は同様のイーサンという若者がもう一人いて、彼もスパイダー・カウンティの同時期の生れですが、殺人容疑で逮捕されていました。彼の牢に、彼の父親と称する紳士が現われ彼を助けようとします。そして一緒にどこかへ行こう、と言いますが、イーサンには、同じ家で育ったアンナという恋人がおり、別れも言わずに去ることは出来ないと言い、家に戻ります。そこでアンナの父親に撃たれそうになったイーサンは、結局アンナも一緒に連れて行くという条件で、その父親と称する男に同行しようとします。その男の説明では、彼らはオリオン星系のエロスという星から来たのであり、その星では気候変動により男が生れなくなり、絶滅の危機にありました。そこで5人のエロス人が実験的に人間の姿になって人間の女性と結婚し、5人の男の子を産ませたものでした。しかしイーサンは結局アンナと一緒に地球で生きていくことを選び、他の4人も同じ選択をし、5人のエロス人は失敗してエロス星に戻って行った、というストーリーです。例によってクモ型エイリアンがグロいですし、ストーリーももう一ひねり欲しかったです。

トワイライト・ゾーンの”Static”

トワイライト・ゾーンの”Static”を観ました。エド・リンゼーは初老の独身男で、下宿屋に住んでいました。彼にはヴィニーという恋人がいて20年一緒に住んでいますが、結婚するチャンスを失ったままでした。リンゼーはTVの番組が嫌になり、地下室から昔のコンソール型のラジオを取り出し自分の部屋に据付けます。そのラジオは幸いまだ動作し、そこから流れてきたのはトミー・ドーシーのラブソングで、彼が20才の頃流行っていたものでした。しかし他の者にそれを聞かせようとするとラジオは雑音しか流しません。また新しいラジオでは彼が聞いたものは放送していません。彼は放送局に電話しようとしてオペレーターに番号を尋ねますが、その放送局は15年前に廃業したと言われます。ヴィニーはリンゼーに、もう一度若い時をやり直すことは出来ないと説得しますが、リンゼーは彼女を追い出し、昔のラジオを聴き続けます。その内彼は20才の頃の姿に戻り、ラジオから流れるトミー・ドーシーの曲に合わせてヴィニーにプロポーズします。
という話で、1960年代のTV番組のDVDやブルーレイばかり観ている私にはちょっと身につまされる話でした。