ジョン・ヒューストンの”Moby Dick”(白鯨、1956年)

ジョン・ヒューストンの1956年の”Moby Dick”(白鯨)を観ました。私はこの有名な話の原作をお恥ずかしながらまだ読んでいません。この映画は興行的には失敗だったようですが、原作に忠実な映画化だそうで、重厚で非常に感銘を受けました。これを観たきっかけは、原子力潜水艦シービュー号のネルソン提督を演じている、リチャード・ベースハートがイシュメイルを演じているからです。グレゴリー・ペックのエイハブ船長が、単に復讐の狂気に取り付かれた人間というより、かなり理性的な名船長でありながら、それでもモービー・ディックに対する怒りを禁じ得ないという感じが非常に良く演じられていました。私は、もっと小さな船で、また乗組員も数人で鯨と戦うのかと想像していましたが、技術的には銛を手で撃つなど原始的ですが、捕鯨船そのものはかなり大きな船で予想と違いました。また、海域的にも喜望峰辺りから延々とビキニ環礁の付近まで鯨を追いかけており、こんな大規模なものだとは知りませんでした。ベースハートはシービュー号の時と比べて約10年前でかなり若々しい感じです。スピルバーグの「ジョーズ」はこの映画の影響を受けており、小林信彦はそのパロディーで「ジェリーズ」(大クラゲ)の話を書いて、冒頭を「私の名前だったら石丸としておこう。」で始めています。(注:「白鯨」の冒頭は、”Call me Ishmael. “で始まります。)