アーウィン・アレンの「タワーリング・インフェルノ」

今さらですが、この歳になってようやく「タワーリング・インフェルノ」を観ました。一つはアーウィン・アレンの1960年代TV作品を全部観終わったので、これもということ。(ポセイドン・アドベンチャーは何年か前に観ています。)それから、もう一つは9/11というこの映画以上の悪夢が起きた後でもこの映画の価値はあるのかの確認という意味です。
いやー、TVドラマではチープでナンセンスな脚本で、予算をけちったドラマを撮り続けていたアレンからするとまるで別人の作品のようです。(ちなみに最後のタイトルロールで、アシスタント・ディレクターの所にウィリアム・ウェルチの名前があって笑えました。)まあアレンは総指揮で実際の撮影他は他の人がやったのが良かったのでしょう。ただ1960年代TV作品の影響は多少見られて、例えばビルの配電盤が火を吹くのは、原子力潜水艦シービュー号で嫌というほど観ています。またポール・ニューマンが親子3人を連れて非常階段で逃げるシーンは巨人の惑星のシーンをちょっと思わせました。その俳優ですが、信じられないくらい豪華です。主役がポール・ニューマン(ビルの設計者)とスティーブ・マックィーン(消防隊の隊長)、ビルのオーナーがウィリアム・ホールデン、ポール・ニューマンの恋人がフェイ・ダナウェイ、老詐欺師がフレッド・アステア、ついでに配電室の所長がO・J・シンプソンです。
脚本は色々突っ込み所はあって、いくら配線材をけちったからといって、あの位で火が出たりはしません。また最後の水タンクを爆破してそれで消火するというのも、水の量が明らかに多すぎます。とはいえ、画面のすごさがそういう脚本のアラを全部カバーしてお釣りが来ます。家の高級オーディオ(?)が実に迫力満点のサウンドを出してくれました。
アーウィン・アレンもこの作品で止めておけば「パニック映画の巨匠」で終れたのですが、1980年の「世界崩壊の序曲」が大失敗し、今まで稼いだ分を全部失ってしまいます。そういう意味では浮き沈みの激しい人です。
最後に、実際にあった9/11で亡くなられた消防士の方々のご冥福を心からお祈りしたいと思います。火というものの本当の恐ろしさがこの映画で良く理解出来ました。