実際に黒部ダムを見てきて、やはり映画の「黒部の太陽」を観たくなり、Amazon Primeで観ました。石原裕次郎がこの映画は映画館で観て欲しいと言ったことから、長い間DVDやBlu-rayにならずにほぼお蔵入りフィルムと化しかけていたものです。
最初の企業とのタイアップ映画で、そのせいか関電の社長が格好良く描かれすぎですが、そうはいっても三船敏郎と石原裕次郎という二大スターの競演は素晴しく、その他も宇野重吉、大滝秀治、志村喬、辰巳柳太郎、二谷英明、樫山文枝、高峰三枝子など豪華きわまりないキャスティングです。
この映画で初めて知ったのは、いわゆる黒部ダムの黒四ダムの前に黒三ダムというのが戦争中に建築されて、これが黒四以上の大変な工事でトンネルがもろに活断層に当たったため岩盤の温度が170℃以上になり、ダイナマイトをセットすると導火線で点火する前にその熱で爆発してしまい、雪崩で宿舎がやられたのと合わせて300人もの犠牲者が出たということでした。(吉村昭にこのトンネル工事を題材にした「高熱隧道」という小説があります。)石原裕次郎の父親がその工事の指揮を執っていて、自分の子供(裕次郎の兄)に発破を仕掛けさせて死に至らしめたという過去があることになっています。
最初に登場する裕次郎はフォッサマグナ沿いにトンネルを掘ることの危険性を訴えますが、この辺り1968年当時で学生紛争のピークの時期であり、そういう学生運動の影響が裕次郎の言動に感じられます。また私は破砕帯のリスクは当時分っていなくて、実際に工事して初めて遭遇したのかと思っていましたが、実際はある程度は予想していたようです。しかしその割りには準備が不十分極まりなかったと思います。
一方の三船敏郎はまあ言うことなくて、こういうビジネスマンの役も見事にこなしています。また破砕帯にぶちあたった時の画面は、撮影のセットのミスで計画の倍の水が押し寄せてきたんだそうですが、三船敏郎が一歩も退かなかったそうで、それが「退避!」と叫ぶシーンに活かされています。
まあ3時間16分という長大な映画ですが、やはり一度は観ておくべき映画と思います。
熊井啓の「黒部の太陽」
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