古今亭志ん朝の「真田小僧、駒長」

jpeg000 109今日の落語、志ん朝の「真田小僧、駒長」。
「真田小僧」はこまっしゃくれた子供が親をだまして銭をまきあげるお噺。母親が亭主の留守に間男を引きずり込んだと思わせて父親から銭を巻き上げる腕は相当なものです。
「駒長」はお駒長兵衛の略。江戸が舞台の噺なのに、出てくる丈八という男は上方言葉をしゃべります。志ん朝の上方言葉を聴ける貴重なCDです。お噺は借金取りを芝居でだまそうとしたのが、嘘から誠が出てしまうものです。

小林信彦の「背中合わせのハート・ブレイク」

jpeg000 96小林信彦の「背中合わせのハート・ブレイク」を再読。1988年の作品で、単行本発売時には「世間知らず」というタイトルでしたが、作者が後に「世間知らず」という言葉が死語になっていることに気がついて、文庫本になる時に現在のタイトルに変えられました。私は、このため文庫本が出た時に新刊かと思って間違って買ってしまった記憶があります。
この小説は、1.小林信彦の高校時代をモデルにした青春小説 2.ラブストーリー 3.昭和25年当時、特に朝鮮戦争による世相の変化を描いた小説、の3つの観点で評価できると思います。最初に読んだ時はあまり感銘は受けなかったのですが、今回読み直して、よく出来た作品だと思うようになりました。
最初の青春小説としてですが、小林信彦の高校時代というのはあまりこれまで描かれていなかったので貴重です。映研の部室を勝手に建ててしまったり、高校の見学に来たGHQのメンバーにプラクティカルジョークを仕掛けたり、映画を撮ろうとして本物の拳銃を使い、それが警察に見つかったり、また空襲のシーンを撮るために火薬を調合しようとして、間違えて化学の実験室を爆破してしまったり、とはちゃめちゃぶりが大変面白く描かれています。
次のラブストーリーとしてですが、主人公は、またいとこの混血の女性に恋しますが、お互いに惹かれながら二人の恋はすれ違ってしまいます。長い年月が経って、すれ違いの真相が明らかになって、二人はやり直そうとするのですが…結末はとても切ないものです。
三番目の世相を描いた小説としてですが、小林信彦自身がもっとも幸福な時代として振り返っている昭和24年頃から、朝鮮戦争が始まり東西の冷戦の現実が身近に迫って来て、日本は逆コースという再軍備化の道を歩み始め、という時代の雰囲気が、小説ならではの描写で読む人に的確に伝わってきます。