NHK杯戦囲碁 王銘エン九段 対 藤沢里菜三段

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NHK杯戦の囲碁、本日は黒番王銘エン九段と白番藤沢里菜三段の一戦。王九段は本因坊獲得歴もあり、隅より辺を重視する銘エンワールドと呼ばれる独特の棋風で有名です。藤沢三段はあの藤沢秀行の孫で碁界のサラブレッドです。まだ17歳ですが、既に女流タイトルの獲得歴もあります。(15歳9ヵ月で会津中央病院杯を、16歳1ヵ月で女流本因坊を獲得しています。)対局は序盤は黒の王九段がうまく打ち回し白は真ん中が薄くなりました。それでも白は右上隅にかかっていき、中央に連絡しようとしましたが、黒にその間を分断されてしまいました。結果的に白は中央で2子をポン抜いて厚くなりましたが、その代わり右上隅の白5子をそっくり取られてしまいました。この右上隅の地が大きく、黒が大優勢かと思いましたが、ここからの白の打ち方が見事で、取られた5子にからめながら上辺に打ち込みました。黒は白5子を取り切るために2手かけましたが、この間に白に中央に連絡されてしまいました。(写真はこの場面です。)この結果、左辺の黒が切り離されて薄くなり、白からいじめられました。ここで形勢は大逆転して白の優勢になりました。その後、白は右下隅の三々に入り、地合はさらに白有利になりました。ヨセで左上隅が劫になりましたが、白は劫立てにほとんど意味のない手を打って10目くらい損しました。その後もヨセでは白はかなり損をしました。でもまだ白が盤面でも優勢で終わってみれば白の7目半勝ちでした。藤沢三段は次は山下敬吾九段との対局で楽しみです。また、今期のNHK杯では女流4人のうち3人(謝依旻、鈴木歩、藤沢里菜)が1回戦で勝ちました。

古今亭志ん朝の「居残り左平次、雛鍔」

jpeg000 75落語、今度は志ん朝の「居残り左平次、雛鍔」。「居残り左平次」は、川島雄三監督の「幕末太陽伝」の元になっているお噺。品川の遊郭でさんざん遊んで、そのまま居残ってしまい、結局お金を払わないで出てきてしまう、佐平次の口のうまさ、たくましさが志ん朝によって生き生きと描写されています。「雛鍔」はお武家の子供が、穴開きのお金を知らないで、「お雛様の刀の鍔だろう」としたものを、町家の子供がちゃっかり真似をしてお金をせしめるお噺です。

小林信彦の「オヨヨ島の冒険」

jpeg000 69小林信彦の「オヨヨ島の冒険」を再読。いうまでもなくオヨヨ大統領シリーズの第1作で、最初は子供たちに向けて書かれて、小学五年生の女の子が主人公です。この女の子は、小林信彦の長女がたぶんモデルで、私とほぼ同年齢なので、この作品に出てくる1970年当時のギャグはほとんど説明不要でわかります。逆に今の子供だったら、ニコライとニコラスのモデルがコント55号だっていっても何のことだかわからないでしょう。パパのあだ名がヒゲゴジラっていうのも。
ルミのおじいちゃんが瀬戸内海の孤島で一人暮らしているという設定は、ちょっと高橋和己の「散華」を思い出させます。

古今亭志ん朝の「唐茄子屋政談」

jpeg000 72落語、志ん生の「唐茄子屋政談」が前半だけだったので、全体を通して聴きたくなって、志ん朝のを取り寄せました。前半部は奇しくも親子の聴き比べになりました。全体にぞろっぺえの感じがする志ん生に対し、志ん朝のは噺の内容が細かく補足されていて、私には志ん朝の方が好ましく思いました。噺の内容としては、遊びが過ぎて勘当された若旦那が、身投げをしようとしていた所を叔父に見つかって止められ、叔父の家に居候して唐茄子(かぼちゃ)を売る行商として働くことになりますが、唐茄子の売上げを不幸な女性にあげてしまいます。そのお金を因業な大家が取り上げてしまったのを、若旦那が知って、大家の所に乗り込んで大家を殴ります。このことがお上の知る所になり、大家は罰を受け、若旦那にはお褒めの賞金が出て、勘当も取り消されるという、「情けは人のためならず」の噺です。通して聴いて、人情噺の傑作と思います。志ん朝は自身が落語界の若旦那的な存在だったせいもあると思いますが、若旦那を演じさせると本当にいいですね。

筒井康隆の「ビアンカ・オーバースタディ」

jpeg000 63筒井康隆の「ビアンカ・オーバースタディ」を読了。
昔、「時をかける少女」のジュブナイル小説を書いた筒井康隆がライトノベルに挑戦したもの。といっても筒井康隆なんで、そのまま単なるライトノベルを書くはずがなく、ライトノベルでありながら、ライトノベルのパロディ、からかいになっています。
「涼宮ハルヒ」シリーズのいとうのいぢのイラスト付き。
目次を見るだけで既に爆笑で、全部の章が「~スペルマ」で終わっています。
第一章 哀しみのスペルマ
第二章 喜びのスペルマ
第三章 怒りのスペルマ
第四章 愉しきスペルマ
第五章 戦闘のスペルマ
何でかというと、美少女高校生のビアンカが生物部という設定で、放課後にウニの生殖実験をやっていて、それにあきたらず人間の生殖を観察したくなって、自分のファンの下級生の男子のスペルマを採取する(つまり抜いてあげる)から、こういうタイトルになっています。
ラノベながら、ちゃんとSFにもなっていて、かつ文明批判的な要素も入っており、また筒井康隆自身の60-70年代のスラップスティックの雰囲気がよく出ています。
筒井康隆ももう80歳を超えているんでしょうが、こういうのをまだ書ける、っていいと思います。

フラバァ(The Absent-Minded Professor)

Flubberウォルト・ディズニー・スタジオの1961年の映画、「フラバァ」(うっかり博士の大発明 フラバァ)を取り寄せて観ました。亡父が、私が小学4年生の時に、一度だけ連れて行ってくれた映画が「トラ・トラ・トラ」でその時にリバイバルで併映されていたのがこの「フラバァ」でした。コメディー映画の傑作です。お話しは、ある大学の化学のブレイナード教授が、いつも怪しげな実験を繰り返しているのですが、偶然に、フラバァ(Flying Rubber → Flubber)という物質を作り出してしまいます。この物質は弾力性にすばらしく富んでいて、またそれ自体がエネルギーを持っていて、これをくっつけるとくっつけられたものは宙に浮きます。
丁度ブレイナード教授の大学のバスケット部とライバル大の試合がありましたが、教授の大学のチームは身長が低く、ライバル大にまったくかないません。ですが、ブレイナード教授がチームの選手のバスケットシューズの底にフラバァをくっつけたので、選手達は驚異的なジャンプ力を身につけ、試合に逆転して勝ちます。このバスケットボール試合のシーンが爆笑ものです。
また、フラバァの力を知った成金が、だまされてフラバァ付きのシューズを履かされ、ジャンプし始めると止まらなくなり、TV中継がやってきたり消防署がやってきたりと大騒ぎになるシーンがまた爆笑ものです。子供たちがこのジャンプのシーンを眺めながら、アイスキャンデーを舐めているのですが、ジャンプで上下するのに合わせて子供たちがアイスキャンデーを上下に舐めるのがまた笑えます。
教授はさらに、フラバァを自分のおんぼろT型フォードに組み込むと、このT型フォードは空を飛ぶようになります。教授はこのT型フォードでワシントンに向かって、自分の発明を政府に認めてもらおうとするのですが、UFOと間違えられてジェット戦闘機に追いかけ回されたり、ミサイルに狙われたりします。
小林信彦は、この映画を封切り時に観ていて、「地獄の映画館」の中で、スラップスティックコメディーの典型例として、この映画を高く評価しています。
この映画は1997年にリメイクされています。