昨日の(昨日はオペラ鑑賞だったので、録画で視聴)NHK杯戦の囲碁は黒番が一力遼8段、白番が黄翊祖8段の対戦でした。布石は黒が2隅小目、白が2隅星でした。左下隅で一力8段は白の星に対し、いきなり三々に入りました。以前買ったアルファ碁に関する本の中では「絶対に私はいきなり三々に入らない」と言っていましたが、このNHK杯戦でも既に2度目で、完全に意見を変えたようです。左上隅と上辺の折衝で、白は黒を無理矢理切り離し、また黒も上辺の白を押さえていって、いきなり攻め合いみたいな格好になりましたが、結局白が黒の4子を取込み、かなりの大きさの地を持って治まりました。黒は厚くはなりましたが、締め付けとかが利いた訳ではなく、この別れは白が打ちやすかったかと思います。黒がこの厚みを活かして右辺の白に迫った時、白がその黒に付けたのが若干問題手で、黒に跳ね出されて切断され、中央の浮いた白は黒の厚みを活かしての攻めの格好のターゲットになった感じです。しかし、黒が厳しく攻めるというより手厚く打った関係で、白は黒模様の中で居直り、それなりに地をもって治まった感じになったので、ここでも白がポイントを上げたと思います。そうなると黒は左辺の白を分断し、なおかつ下辺を拡げることになりますが、白は下辺についてもうまく侵入し、また左辺も大きな損をしないでしのぎました。これで下辺を他に影響が出ない形でしのげば白の完勝譜でしたが、上方の白と下辺の白の間で、ちょっと白に疑問手があり、下辺と上方の白を見合いにするような打ち方を黒にされてしまいました。白は下辺を優先したのですが、今度は一度は地をもって治まったかに見えた上方の白に手が生じ、結局この白が死んでしまいました。こうなると黒地が膨大で、さすがの白の好局もフイになりました。一力遼8段はしのぐが得意で攻めて相手の石を取るのは、相手のしのぐ手がすべて見えてしまって不得意だそうです。しかし本局ではこれしかないというわずかな勝ちパターンを見事に捉えて勝利しました。