先崎学9段(将棋)の「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」

先崎学9段(将棋)の「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」を読了しました。藤井聡太7段の大活躍で将棋ブームがにわかに起き、藤井7段だけじゃなくてひふみんなんかもTVにひっぱりだこ、という状況で、何故かマスコミには良く出ていたこの人が出てこないな、と思っていたら、何とうつ病で1年近く療養していたのでした。もう私もうつの時のことはあまり思い出したくないのですが、それでももう一度振り替える意味があるかな、と思って読みました。まずは先崎9段のうつ、は最近多い非定型のうつ、ではなく典型的な昔からあるうつだということです。この定型のうつは、初老というか男性更年期障害の時期に起きやすいということで、私の場合もまさにそうでした。後共通点として大きいのは、「うつの時はとにかく歩け」と精神科医である先崎9段のお兄さんが言っていることです。私のうつは激越性と言って、不安感よりも焦燥感が強く出るもので、ともかく症状がひどい時はじっと座って適当にのんびりと時間を過ごす、ということがまったく出来なくなります。そういう時のほぼ唯一の気を多少でも紛らわす手段が歩き回ることでした。よく家から溝の口までの往復5kmくらいを歩いたりしました。また、休職から会社に復帰して数ヶ月経った時が逆に症状のピークで、その時は15分も机にじっと座っていることが出来なくて、席を外して会社のビルの屋上(テニスコートがあります)をぐるぐると歩き回って何とか1日を過ごしていました。
後、先崎9段の話で身につまされたのは、プロ棋士である先崎9段が病気の時は7手詰めすらすらすらと解くことが出来なくなり、5手詰めというほとんど初心者のレベルにまで戻らないといけなかったということです。うつで認知症みたいになる、というのはあまり聞いたことがありませんが、ともかく普段簡単に出来たことが出来なくなる、というのはその通りです。
結局、先崎9段は、プロ棋士のアイデンティティーで将棋に集中することで自分を取り戻していきます。私の場合はそれは外国語の勉強(特に英語)でした。
うつ、に関する本は沢山読みましたが、患者自身が克明に症状を記録したものというのは意外に少ないので、そういう意味では貴重かもしれません。

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