白井喬二の「人肉の泉」連載第9回

白井喬二の「人肉の泉」の連載第9回の分(「主婦之友」昭和5年12月号)を読了。この小説は以前第1回(同4月号)だけ読んでいます。第1回の話は幕府から洋風銃砲隊の編成を命じられた高島四郎太夫(高島秋帆)と、元からあった和銃の隊の隊長の田附四郎兵衛が争うという話でした。この第9回で分かることは、結局田附の讒訴が成功して高島秋帆は牢に入れられています。それを救った金持ちで金井時之助というのが登場しますが、この金持ちの正体が本名を鶏頭昇之助(とさか・のぼりのすけ)といい、ある時洞窟で何かの爆発に遭い、30才ぐらいの若者だったのがすっかり50代~60代の老人のような風貌に変わってしまったが、その洞窟の中で何万両も大金を見つけ金持ちになるという設定です。それでその女房がお仙という美人なのですが、それが由利という侍と不倫をしていて、昇之助が爆発で死んでしまったと思って二人は一緒になります。しかしお仙の腹には昇之助の子供が宿っていて、嫌々ながら二人はその子を育てることになります。そのうち由利は怠け者であるためすっかり貧乏になっていた所を、金持ちの金井の振りをしている昇之助が由利とお仙と子供を自分の家の果樹園の番人として引き取り、実の子供と始めて会う、という所で第9回は終わっています。おそらくこれから昇之助がお仙と由利に何か復讐を果たしていくのではないかと思いますが、それと高島秋帆が今後どうからむのか分かりません。まあ気長にこの年の主婦之友が古書店に出回るのを待つしかないようです。

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