本日のNHK杯戦囲碁は黒番が伊田篤史8段、白番が志田達哉8段の対戦でした。伊田8段はNHK杯戦初出場の時に優勝(最年少記録)、また志田8段は2018年に準優勝の経験があり、好対局です。棋風的にも伊田8段は一杯に打つ豪腕、志田8段は地味に受けながらヨセで抜き去るというもので対照的です。対局は左辺の白への攻めをにらんで黒が下辺の白にもたれて行き、白がハネたのを黒が切っていっていきなり戦いが始まりました。結果として黒は下辺に潜り込んで地を稼ぎ、白は黒2子を取り込んで厚くなりました。戦いは続いて右辺に移り、白がコスミツケられて立った所から二間に開けば普通でしたが、それだと右下隅からの地が大きすぎるということで、右下隅に侵入し、黒が立った白2子に迫ってここでも競い合いになりました。ここでの戦いは、途中で白が右上隅の三々に打ち込みましたが、結果論としてはあまりうまくなかったようです。白は右辺の3子を捨てて最初に立った石を中央に脱出し、なおかつ右上隅で活きる手を残しました。黒は右上隅を気にせず上辺に展開したのが好判断で、白は右上隅で活きるのを強制されその間に黒が上辺で地を確保したということになり、ここで黒がリードしたように思います。黒が上辺に展開した結果、白の左上隅も薄くなりました。この後の焦点は左下隅から中央に延びる黒の一団の眼がはっきりしていないので、白の戦略としてはこれへの攻めを図り、それを利用して中央に地を付けるということでしたが、黒は左辺と右辺の白の連絡を妨げ、かつ左辺で取られていた2子をうまく活用して白に数手利かしを打ち、この結果左下隅からの黒の一団にまったく心配が無くなっただけでなく、中央に黒地が10目弱付くという戦果を挙げました。これで黒の勝勢でしたが、最後は白が右辺で取られている3子を利用して利かそうとしたのが逆に黒に切り換えされ、結局その3子が生還した代りに、右辺から延びる白の一団が切り離され最終的には攻め合いでしたが白の手が短く、この白が全滅し投了となりました。伊田8段の戦いの巧みさが光った一局でした。