本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が高尾紳路9段、白番が富士田明彦7段の対戦でした。この碁は、私がこれまで観てきたNHK杯戦の囲碁対局の中での最大の逆転劇でした。写真の場面で本来は碁は終わっていました。2箇所での劫争いで高尾9段に錯覚があり、右下方面の白7子で元々取られてたものが逆に黒5子を取り込んで生還しています。単純計算で24目の出入りですが、黒が右辺で1線を渡らされたり、中央で利かされたり、下辺の黒が弱くなった損も入れると40目レベルの失点でした。代償で黒は右上隅を白を半分取れましたが、この白はまだ活きる味が有り、実戦でも復活しました。富士田7段は勝勢になってからの打ち方が頑張り過ぎで、中央で黒2子をもっときっちり取っておけば紛れることはなかったのですが、頑張って受けたため、後でこの2子を生還させる手が生じ、それだけならまだしも、この白の一団が全滅し、50目以上の黒地が出来ては、黒が逆転しました。その後白が左上隅を切って行ったのを黒が妥協して、白が左上隅を取って差が若干縮まりましたが、最後左下隅から下辺で黒が左側の黒を捨てて締め付け、下辺の白を取ったので、ここで白の投了となりました。富士田7段に取っては9割方勝っていた局を頑張り過ぎで落としてしまい、悔しい一局でした。