西山隆行の「移民大国アメリカ」

西山隆行の「移民大国アメリカ」を読了。移民に関する本も既にこれで5冊目です。「移民」について今議論が喧しいのはアメリカと欧州だと思い、アメリカの実情を知りたくて買いました。ただ難点は2016年6月の出版で、2016年の大統領選については途中までしかフォローしていない状態でこの本が書かれているということです。筆者は東大法学部出身の人ですが、何かいかにもその手の優等生が要領よく複数の資料をまとめた、という感じで情報を得る上では有益でしたが、西日本新聞の本みたいに、良く調べたな、という感動はまるでありませんでした。一つ面白かったのは、アメリカの労働組合が、移民の流入は労働者の平均給与水準を下げると最初は反対していたのが、今は労働組合に入る人が激減したため、今度は逆に移民の取込みを図っているのだとか。西日本新聞の本に日本の連合の人が出てきて、これがどうしようもない移民反対論者でしたが、いつかは連合も外国人労働者を組織化しようと躍起になる日が来るのかも。後面白かったのは、黒人といっても、例えばオバマ大統領の父親はケニアからアメリカにやってきた留学生で、一種のエリートであり、いわゆるアメリカに奴隷として連れてこられた人達の子孫ではなく、この手の人はむしろ共和党支持者なんだとか。その他、エスニック・ロビイングの話とか、最後に日本の課題についての話もありますが、どれも突っ込み不足という印象を受けます。

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