小沢さとるの「サブマリン707」と「青の6号」


小沢さとるの「サブマリン707」と「青の6号」を読了。「青の6号」は確か大学時代にも一度読み直していますが、「サブマリン707」を全部読み直すのは、実に53年ぶりくらいになります。私が幼稚園児の頃、亡父は何故か毎週私と兄に駅の売店で買った少年キング(兄用)と少年サンデー(私用)を持って帰ってくれていました。それで私が夢中になって読んでいたのが、この小沢さとるの2つの潜水艦漫画です。もっともサブマリン707の連載が1963~66年、青の6号が67年なんで、おそらく私が主に読んでいたのは青の6号の方ではないかと思います。ちなみに原子力潜水艦シービュー号が1964年から、スティングレイ(サンダーバードのジェリー・アンダーソンのスーパーマリオネーション作品)がやはり1964年からであり、小沢さとるの潜水艦漫画はその2つにむしろ先駆けています。1960年代にこうして潜水艦が主人公のフィクション作品が多く現れた理由ですが、いくつか考えられます。

(1)1955年に最初の原子力潜水艦ノーチラス号が就航し、それまでの定期的に酸素を取り込むため海面に浮上する必要があるディーゼルエンジン形の潜水艦に比べ潜行時間がほぼ制限無しになり、軍事的な重要性と作戦能力が飛躍的にアップした。
(2)同じくその原子力潜水艦にポラリス形のICBMが備えられたもの(弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN))が1960年より実戦配備され、敵国から核攻撃を受けた場合の反撃手段として戦略的価値もそれまでとは比べられないほど増大した。
(3)1960年にバチスカーフ(深海用潜水艇)であるトリエステ号が、マリワナ海溝の最深部約11,000メートルに初めて達成した。
(4)フランスの海洋学者クストーによる深海を扱ったドキュメンタリー映画「沈黙の世界」が1956年に封切られ、カンヌ映画祭でパルムドールを受賞。
(5)1950年代からの米ソの宇宙開発競争と平行し、海の中も人類に残された最後の秘境のもう一つのものとして関心が高まった。
以上は世界共通ですが、日本では更に、
(1)戦争終結から15年以上が経過し、ようやく第2次世界大戦、太平洋戦争を振り返ろうという動きが強くなり、戦記物ブームが起きた。漫画にも多数の戦記物が登場。(「紫電改のタカ」「0戦はやと」「ゼロ戦レッド」など)
(2)忍者物のブームがやはり1960年代に起きた。小説では山田風太郎の忍法帖シリーズ。漫画では白土三平や横山光輝など。潜水艦は海の忍者みたいなものなので、共通性がある。
といったことが原因として挙げられると思います。
それで小沢さとるの2つの作品ですが、この2つは続けて連載されたのであり、2つの間にかなりの共通性があります。つまり、艦長の顔や性格がほとんど同じ、707の後半で国際組織に707号が所属するようになるが、それが発展して青の6号の「青の機関」(海洋航行の安全を守る国際機関)になったと考えられます。また707号のシュノーケルに付けられた「顔」マークが、青の6号での新生6号にもまったく同じ物が付けられています。
小沢さとるは、高校時代に手塚治虫のアシスタントをやっていたということですが、絵的にはむしろ横山光輝と非常に似ていて、実際に後に「ジャイアントロボ」で小沢と横山の共作が実現しています。また、小沢は専業の漫画家ではなく、新日鉄や日野自動車で働いていたメンテナンス系のエンジニアでした。そういう経歴が、当時としてはかなりしっかりした潜水艦の考証に役だっていたと思われ、今読んでも当時の潜水艦の最新の技術をよく採り入れていて、なおかつオリジナルの設定も追加しており、その辺りのバランスが見事と思います。
また、1963年というと第2次世界大戦が終わってまだ18年であり、それが設定に反映して707号の艦長はドイツに派遣されUボートの艦長として活躍していたという設定であり、また敵側にも元ドイツのUボート艦長というのが登場します。また青の6号の方では、沈没した戦艦大和を改造して潜水艦として用いるという話が出てきます。
原子力潜水艦シービュー号をずっと観ていますが、フラストが貯まるのが、潜水艦同士の戦いというのがほとんど登場しないことで、登場しても息のつまる潜水艦同士の戦いという感じではなく、あっさりケリがついてしまうケースが多いです。それに対し小沢さとるの2つの漫画は、そのほとんどが潜水艦 対 潜水艦の緊迫した戦いを描いています。
子供の頃夢中だったものも、大きくなってから再度見てみると意外と詰まらなかった、ということはありがちですが、この小沢さとるの2つの漫画は、ものすごい傑作という程ではないですが、それなりに今でも楽しめる作品でした。

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