本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸名人、白番が酒井佑規4段の対戦でした。この碁では右下隅で白のカカリに黒が低く一間に挟み、白がかけたのに黒が出切っていったという所から全体の方向が最初から「戦い」という感じになりました。元々酒井4段が結城聡9段ばりの「武闘派」みたいです。また芝野名人もその辺りでは引けを取りません。酒井4段の真骨頂は、右辺右側でほぼ取られかけていた白1子を引っ張り出し、場合によっては1子ポン抜いている黒の一団を狙おうとしたのがそれらしかったです。ここの折衝で白は黒3子を取り込んで地を稼ぎましたが、その分中央の白3子が切離されたのと、かつ右辺下方から中央に延びる白の一団が非常に薄くなりました。黒はこれを本気で取りに行き、白からはどうやっても後手一眼しかない、ということになりました。その後白は下辺左方の黒を攻め立てこちらとの攻め合いを目指しましたが、残念ながら手数は黒の方が長いままでした。そこで白は中央にアヤを求めて黒を分断して行きましたが、黒は上辺の黒をあっさり捨てて中央を補強しました。その後黒が更に中央の白の種石2子を取ったため黒の石は全部活き、結局右辺下方からの白の大石は攻め合いにもならず全滅し、110目(?)レベルの大きな地が完成しました。普通はここで投了ですが、その後白はそれでも左上隅から上辺、左辺を全部まとめて地にしようと頑張りました。しかし黒が上辺に打ち込んだ石を活用してまずは取られていた上辺の黒が眼2つですが復活しました。その後黒が更に左上隅三々に打ち込んでいって、これが活きるかどうかが勝負になりました。結局ここは劫になり、白からは下辺の取られている石の復活を見せて劫材はそれなりにあるものの、黒からも左上隅で活きようとする手が全て劫材になるのと、たとえ劫に負けても劫立てで多少の白地を減らせれば勝ちという状況となり、白が投了しました。敗れたとはいえ、酒井4段の勝負を諦めない粘りは見事でした。