塩野七生の「ローマ人の物語 勝者の混迷」

塩野七生の「ローマ人の物語 勝者の混迷」を読了。カルタゴとの三度の戦いで、カルタゴを最終的に滅亡させ、ローマが地中海の覇者となります。そうなるとこれまで共通の敵に対することに必死で表面化しなかった、内部の矛盾が吹き出します。それが貴族と平民の対立で、特に平民の中心であった独立農民層がシチリアなどの新しい領土から入ってきた安い小麦に対抗出来ず没落していわゆる無産階級に落ちぶれます。そうなると市民が支えて来たローマ軍も質量共に低下するという、誰から見てもはっきりした社会的問題が発生します。そこに登場するのが護民官としてそれを改革しようとしたグラックス兄弟で、土地改革法を制定し、カルタゴなどの新しくローマの公有地になった土地をこうした無産階級に無償で供与して彼らを再生させようとします。しかしこうした改革を行うものにはいつの世でも抵抗勢力というものがつきものでですが、兄は元老院の一部に扇動された民衆に殺され、弟も元老院最終勧告を宣言されて暴徒扱いされ、自死します。その後、叩き上げの軍人であるマリウスが軍を志願制に変えることで無産階級を吸収し、ローマ軍の危機は一応解決します。そのマリウスの配下で、マリウスと違って軍事的才能も政治的才能もあったスッラが独裁官に就任し、民衆派の力を抑え、元老院の力を強めて共和政を昔に戻しますが、しかしそれはスッラの死後たちまち元に戻り、その後スッラ以上の軍人的才能があったポンペイウスが登場し、オリエントを制圧し、ローマの地中海の覇者としての地位を完璧にします。そこでいよいよユリウス・カエサルが登場し…ということになります。

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