大川玲子の「聖典クルアーンの思想 イスラームの世界観」

大川玲子の「聖典クルアーンの思想 イスラームの世界観」を読了。先日「クルアーン」自体は一通り読了していますが、そこで疑問が残ったのは、何故イスラム教が短期間に多くの信者を獲得できたか、ということです。この本の情報で、その理由は(1)ムハンマドという預言者が直接的にアラーの言葉を代弁し、それが何度も繰り返され、帰依する者を増やしていった。 (2)先行するユダヤ教、キリスト教の教義の内の神話的な要素など都合の良い部分は採り入れるものの、それ以外は「ユダヤ教、キリスト教」が神の教えを歪めた、として自分に都合の良い教義体系を作ることが出来た。 (3)キリスト教的な「汝の敵を愛せよ」はまったくなく、ハムラビ法典のように「目には目を、歯に歯を」で戦争を通じて信徒を獲得していった。
といったことではないかと思います。またユダヤ教との討論を通して教義を練り直していたこともこの本には出て来て、例えば神の教えがモーセなどには一度で与えられたのに対して、ムハンマドには何度にも分けて与えられたのは何故か、それは偽預言者の証拠ではないか、という論難に対して対抗する理論を作っていきます。
後は興味深かったのは日本でのイスラム教の受容と、クルアーンの翻訳史で、戦前はいわゆる八紘一宇的なアジア進出の中で、アジアに多いイスラム教徒を日本の勢力の中に取り込むための手段としてイスラム教が研究されたというのがあり、あの大川周明(東京裁判の時は梅毒で精神に異常を来しており、東条英機の頭を叩いたことで有名)がクルアーンの日本語訳を完成させていたことも初めて知りました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA