稲垣浩監督の「無法松の一生」、1958年版を観ました。1943年版が日本の軍部と、占領軍GHQによって、二度に渡って検閲を受け削除を受けた無念を晴らすため、稲垣監督が敢えてリメイクしたものです。キャストは松五郎が三船敏郎、吉岡未亡人が高峰秀子と当時としては最高のものと思います。ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞しています。1943年版と比べてどこがカットされたかが良くわかります。日本の軍部がカットを命じたのは、要するに松五郎が吉岡未亡人に思いを寄せているとわかる所すべてです。車引き風情が軍人の未亡人に思いを寄せるなんぞはけしからん、という訳です。GHQがカットしたのも理不尽で、敏雄が学芸会で「青葉の笛」を唄う所や、提灯行列で学生が軍歌を歌う箇所などです。カットされた箇所を除いて比較して、1943年版と1958年版はどちらも素晴らしい甲乙付けがたいものだと思います。この作品、原作である「富島松五郎伝」も読んでみようと思って、取り寄せ済みです。