白井喬二の「梁川庄八」と「梁川庄八諸国漫遊」(講談の小説化)

ヤフオクで落札した「白井喬二自選集」(輝文堂、1942年)の中の「梁川庄八」を読了。梁川庄八は戦前の講談で有名だった仙台藩出身の豪傑のようです。1926年に映画にもなっています。白井の小説では、泥亀という盗賊を捕らえる話と、そもそも親の仇である茂庭周防を討ち取る所で話が終わっています。終わり方が中途半端だったので買ってみたのが左のもので「長編講談 豪傑智勇 梁川庄八諸国漫遊」で、大正6年の出版です。この2つを比べると、大衆小説が最初「新講談」って呼ばれたのは良く分かります。講談の方が白井のより話としては面白く、特に庄八の母親が女性ながら大変な力持ちで、器量は良くないのですが、庄八の父が酒が入った状態でからかって、最後はその女性を妻にするエピソードがなかなか面白いです。庄八は茂庭周防を討ち取った後自首して牢に入れられますが、最終的には脱獄して、日本全国を旅します。そして行く先々で義に加担して大暴れします。「諸国漫遊」というと水戸黄門が有名ですが、この頃の講談には明智光秀のとか猿飛佐助の諸国漫遊というのもあったようです。梁川庄八は日本人が好きな義に厚い豪傑です。しかしながらGHQの封建思想の抑圧によって戦後はまったく忘れられてしまったようで、ググってもほとんど情報が出てきません。白井のこの小説はそれほど出来がいいものではありませんが、少なくとも梁川庄八という忘れられたキャラクターを教えてくれるきっかけにはなりました。尚、立川文庫では「柳川庄八」という表記になっています。

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