謹啓-敬具、は問題ありません。

日経ビジネスの河合薫という人の文章から。安倍元総理の国葬の招待状についてのエッセイに以下の文章がありました。
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「招待状の頭語は「謹啓」なのに、結語は「敬具」というお粗末ぶり。」

https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00214/?n_cid=nbpnb_fbed
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「敬具」つつしんで具す(申し上げる、「具申」の具)という意味で、冒頭が「謹啓」の場合でもOKです。最近、こういう自分の限られた知識だけが正しいと思い込み、人の書いたものにけちを付ける人が多いという典型例として紹介させていただきます。画像は大修館の明鏡国語辞典第二版です。私はジャストシステムに勤務していた時に、手紙のソフトの企画に携わっていた(ソフトは単体のソフトとしては日の目を見ず、その時に整備した例文が一太郎の中に入っている程度です。)ので、手紙の書き方については、普通の人より詳しいですし、大正2年に出た芳賀矢一・杉谷代水合編の「書翰文講話及び文範」という候文の手紙例文が多数入った本も持っています。

しかし、この「謹啓ー敬具」を間違いだと言い張る人であれば、この候文も「前略」で始っているのに「(頓首)謹言」で終っているのはおかしい(「草々」でなければならない)とか言うんでしょうね。ちなみに「草々」は同輩以下に使うもので、このようなお詫びの手紙には合いません。(出だしが「前略」なのは詫び状なので、時候の挨拶等は省いてまずはお詫びします、という意味での使用です。)要するに昔は手紙の書き方は法律で決まっていた訳では当然なく、状況に応じて色々な書き方があったのに、今はそれが固定化されたルールのように考えられていて、自分が教えられた、学んだのと違うと間違いだと決めつけるのでしょう。大体今手紙を書く人は激減していますから。

ちなみにビジネスの手紙で多用されている「平素は格別のご高配賜り深謝申し上げます」という言い方も、文字通り読めば「貴社はこの世の中であり得ないような非常な程度の便宜を当社に図っていただきましたので心から感謝します。」という異常に誇張した文章になります。たかがビジネスの関係であれば「日頃はご高配賜り有り難うございす。」「平素はご配慮を賜り御礼申し上げます」とか書けばいい訳です。「格別の御高配」は、強調が二重になっていて却って嘘臭く響きます。このことは以前、大修館の「言語」という雑誌の編集長をされていた方から教わりました。

 

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