小林信彦の「小説世界のロビンソン」再読完了。これは、小林信彦自身の小説体験を振り返りながら、20世紀の小説の変遷を論じたものです。小説の「物語性」を重視して、純文学とエンタテインメントに差を設けず、漱石における落語の影響を論じたり、白井喬二の「富士に立つ影」が取り上げられたりします。この本が最初に単行本で出たのは1989年2月で、その頃私は社会人3年目で、ほとんど本を読まなくなっていました。その私がこれを読んで、触発されて中里介山の「大菩薩峠」を読み始めました。そのように、読者の本を読みたいという気持ちを強力に増幅してくれる本です。(ちなみに大菩薩峠は時代小説文庫の全20巻でしたが、10巻目くらいで挫折しました。)
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