福島正実「未踏の時代 日本SFを築いた男の回想録」を読了。
福島正実が1975年から76年にかけてSFマガジンに連載していたものですが、作者の死により連載七回で中断しています。福島正実はそのSFマガジンの初代編集長で、同時にSF作家であり、SF翻訳家、そしてSF評論家でした。小松左京、光瀬龍、眉村卓、筒井康隆、豊田有恒らを世に出す上で功績がありました。1969年の「覆面座談会」事件で、早川書房を退社することになりますが、この回想記はそこまで至っていません。福島正実は豊田有恒の原稿を勝手に何十枚も縮めてしまったり、各所に論争を挑んだり癖の強い人だったようですが、この人がいなかったら、日本のSFの立ち上がりは数年も遅れていたことと思います。当時のエネルギッシュな仕事ぶりがこの回想記で偲ばれます。