本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が井山裕太大3冠、白番が余正麒8段の対戦でした。この碁の焦点は、左上隅から上辺にかけてお互いが競い合いになり、戦いが中央にまで拡大しました。特に中央で黒が跳ねた所を白が切っていって戦線が拡大しました。解説の趙治勲名誉名人によると、黒は右上隅で白の肩付きした所にしたから跳ねていくことによりこの切りを促し、その心は切られた黒石を逃げていくことで自然に左辺の白模様を消す、という高度な戦術でした。しかし黒が中央で白に付けていった所からお互いにダメが詰まった石がもつれあった戦いになり、結局は上辺から中央に延びていた白6子が黒に取られ、白はその代償で中央で2箇所ポンヌキをすることが出来るという振り替わりになりました。しかし白のポンヌキが実現している訳ではなく、黒からは延びを狙ったり、利かしに使うことが出来るため、この別れは黒が優りました。また黒が上辺中央の白を取ったため、右上隅で白が肩付きした石から展開して来た一団が攻められることになりました。しかし黒は優勢を意識して白を活かして打ちました。また下辺から左辺にかけても、黒は白模様に踏み込むことはせずに下辺を盛り上げることで満足しました。このまま終れば黒の名局でしたが、右辺で波乱が起こり、先ほどの攻められていた白石が何と右辺の黒を取ってしまいました。この代償で黒は下辺を盛り上げることが出来ましたが、実利の損が大きくここで形勢不明になりました。その後左辺のヨセで黒が自分の連絡に不備があるのをうっかりしており、後手で守ることになったため、白が先手で大きなヨセに回り、ここで逆転しました。結果として白の1目半勝ちで、余8段は苦手の相手の井山大3冠から貴重な1勝をもぎ取り準決勝に進出しました。