白井喬二の「豹麿あばれ暦」の連載第1回の分を読了。週刊新潮の昭和33年4月7日号です。この作品は白井喬二がこの年インフルエンザと高血圧で倒れてしまい、連載4回で中断し、白井自身が回復の見込みを感じていなかったため、やむを得ず中止となった作品です。古書店の検索では、この第1回の分しか見当たりませんでした。読んでみてあっと思ったのは、主人公が万能児として育てられた17歳の青年武士ということで、「陽出づる艸紙」とまったく同じ設定です。しかし、「陽出づる艸紙」の主人公は、育てられた父親に敬意を表しその言に従いますが、こちらの豹麿は確かに諸芸百般は身につけたようですが、なかなか親の言うことなど聞かない問題児に育ったようです。白井喬二は、「粗暴に似た神人」「剣の未知にいどむ善魔」として、これまで書いてこなかった新しいタイプの青年武士を描こうとした野心作としています。完結しなかったのが非常に残念な作品です。
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