獅子文六の「おばあさん」を読了。昭和17年から19年の戦争の真っ最中に「主婦之友」に連載されたもの。タイトル通り明治生まれの「おばあさん」が主人公ですが、このおばあさんが69歳という設定にちょっと驚かされます。今なら老け込む年齢ではなく、この物語自体が成立しないのですが、当時は自然な設定だったのでしょう。このお婆さんを巡って、孫娘の結婚(養子縁組)、末の息子の自立と結婚、娘夫婦の家庭争議などを、このおばあさんが仕切って解決していくのですが、そのおばあさんの筋の通った行動が痛快です。昔の日本人の多くの人が持っていた自然な知恵という感じです。時節柄ということで、開戦をおばあさんが知るシーンがありますし、孫娘の結婚相手(養子縁組の相手)は結婚と同時に出征します。この結婚相手についてはおばあさんは最後まで「男らしさが足らない」と心配していたのですが、それがおばあさんの死の間際に解決されておばあさんは安心して死の旅に出ます。実際の自分の祖母のこととかを思い出してちょっとほろっと来る小説です。